その日の打順はどう決まる? これは各球団によって違いがある。阪神の場合は? 例えば星野仙一が監督だった2002、2003年は試合前、当時の打撃コーチだった田淵が原案を作成し、それをヘッドコーチの島野に提出。よほどのことがない限り、変更することなく星野に示される。そこで星野が「よっしゃ」となれば、GOサイン。試合に臨むことになる。

前回の岡田体制でも同様の手順を踏んでいたと記憶する。打撃コーチの案をヘッドコーチが了承し、ヘッドが監督に提示。そこで多少の手直しはあるにせよ、大幅に修正するということはなかった…と聞いた。

となると今回の大幅なガラガラポンの打順変更。打撃コーチの水口、今岡の発想なのか。ヘッドコーチの平田の修正案なのか。それとも最終決定時の岡田の判断だったのか。いずれにしても強烈な打線組み替えとなった4月14日のゲームだった。

9番の投手以外、すべてオーダーを入れ替えた。ここまでのことは岡田体制では初のこと。すべては状態が悪いままの打線が原因。同日のゲームを終わった時点でのチーム打率は2割6厘。これは12球団最低の数字である。

岡田は辛抱強い監督というイメージが強い。コロコロと打順を変えたりはしない。「やっぱり強いチームはガチッとオーダーが組める。相手の先発投手によってのマイナーチェンジはあるけど、基本は崩さない。これが理想の打線やね」としてきた。昨年はそれを体現。1番、2番、4番、7番、8番はほとんど動かさなかった。

その中でも核になるのはやはり「4番」になる。2004年から2008年までの前回監督時、先発メンバー表の4番のところから岡田は名前を書き込んだ。そこに「金本」と書けばいいだけだった。2003年まで3番だった金本を4番に決め「いつもホームランを狙っていけ」と声掛けした。5年間、それは不動のものだった。

それと同様の対応が4番大山だった。実際に2023年のキャンプ中まで4番を大山にするか、佐藤輝にするか。岡田は正直、悩んだこともあったが、最終的にチームへの影響力を考え、大山に決めた。決めた以上、簡単には変更しない。そのあたりの辛抱強さは岡田の采配の根底にある。

それが今回、大山を5番にした。阪神の監督通算7年間で初めて4番のところを書き換えた。簡単なことのようだが、監督にとっては苦渋の決断。この決断を下したことで、他にも打順をいじることが可能になった…ということだろう。

今年、開幕前に岡田は語っている。「まだまだ選手には伸びしろがある。それぞれが数字を伸ばせるはず」と計算していた。目算が狂い、5カードが終わった時点で借金が2。昨年は5カード終了時、貯金2。打線が底の状態と考えれば、そこそこの成績。まずはガラガラポン打線で連敗を止めた。この先、どんな手を打つのか。大山4番がいつ戻るか…。そこが気になる。【内匠宏幸】(敬称略)

【イラスト】阪神の4月13日と14日のスタメン
【イラスト】阪神の4月13日と14日のスタメン