こちらの“浅知恵”を笑われている気もする。前日、ここで「苦しいときこそ今まで通り」と書いたことだ。想像以上に阪神に関する記事を読んでいる指揮官・岡田彰布である。その野球哲学なのだが、それも時と場合によるということか。「めっちゃ動くやん」。スタメンを見て、思った。

結果的に動かした2番・梅野隆太郎、8番・中野拓夢がそれぞれ適時打を放っての1点差勝利。昨季の阪神が戻ってきたか…と思える一戦だった。動いての成功。ここは、さすが百戦錬磨の岡田、勝負どころは間違えないということか。

とはいえ、この日は間違いなく才木浩人だろう。流れを変えるべく、奮闘。116球の熱投で好調の中日打線を7回1失点に抑えた。特に7回、2死二塁から佐藤輝明が一塁へワンバウンドの悪送球でつくったピンチをしのいだのは見事。梅野とのバッテリーごとガッツポーズをつくったのも理解できる。

これで5球団とひと周りの対戦を終えた。結果は6勝8敗1分け。借金2のスタートである。昨年、日本一のチームとしては寂しい気もするが、シーズンは始まったばかりなのでどうこうは言えないだろう。

それにしても、この勝利は大きい。2敗1分けなら初戦の引き分けが何の意味も持たなかったところだ。だが、この勝利で苦手・バンテリンドームの今季初対戦は1勝1敗1分けの五分で終えた。絶好調の中日相手にまずまずではないか。

これでビジターの戦績は4勝4敗1分けの5割に戻した。借金2はホームでのものだ。12球団一の人気を誇る阪神の場合、正直、どこへいってもアウェー感はさほど感じないのだが、やはり甲子園での声援はひと味違う。

以前にも書いたが闘将・星野仙一は阪神監督になるまで「六甲おろし」のルールを知らなかった。02年当時、行きつけの喫茶店で同席した女性に「試合後のあれは勝たんと歌えんのですよ」と教えられたのである。そこから「よっしゃ! 思い切り、歌わしたる!」と地元で圧倒的に強いチームになった03年だった。

「阪神の申し子」である岡田も言うまでもないだろう。16日からは巨人、そして“いってこい”で中日と今季初めての甲子園6連戦だ。もちろん、現状、楽観はできないが、ここで借金返済となれば目標のリーグ連覇へ逆襲が始まると、期待を込めておく。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

中日対阪神 中日に勝利し岡田監督(右)とハイタッチをする才木(撮影・上田博志)
中日対阪神 中日に勝利し岡田監督(右)とハイタッチをする才木(撮影・上田博志)
中日対阪神 中日に勝利し岡田監督(右)ハイタッチをするゲラ(撮影・上田博志)
中日対阪神 中日に勝利し岡田監督(右)ハイタッチをするゲラ(撮影・上田博志)