<東都大学野球:中大3-2国士舘大>◇第2週初日◇13日◇神宮

 67年ぶりに「巨人沢村」は誕生するのか。今秋ドラフトの目玉、最速156キロ右腕、中大・沢村拓一投手(4年=佐野日大)が日米16球団のスカウトの前で、延長10回135球を投げ抜き2失点完投した。最速は154キロをマーク。1位候補の1人にリストアップする巨人は、清武球団代表が異例の直接視察をした。沢村姓が巨人に入団すれば、伝説の速球投手、沢村栄治(1943年退団)以来になる。

 135球を投げ抜いた沢村の右手中指は、痛々しく黒ずんでいた。5回から血マメができて「ズキズキした」。それでも続投を志願し、血染めのボールで延長10回2失点。「見苦しくても、勝てばいい」と喜んだ。

 1回に153キロをマークした。内角低めへのストライクだった。スカウト陣のスピードガンは、神宮表示を上回る154キロ。2番今井に対しては142キロのフォークで3球三振に切った。フォークの最速は144キロ。大学生離れしたボールの勢いで、血マメのない4回までに、150キロ以上が10球を占めた。

 巨人は6人体制でマークした。異例の直接視察を行った清武球団代表は、早大・大石、斎藤の名前を挙げた上で「1位候補?

 それはそうでしょう。堂々たるもの。素晴らしいピッチャー」と評した。「巨人沢村」は沢村栄治以来、存在しない。元巨人、高橋善正監督(65)は「そんなこと言ったら天の方が怒っちゃう」と笑い飛ばすが、現実になる可能性はある。

 早大・斎藤のようなエリート街道は歩んでいない。佐野日大では甲子園出場はなく4番手投手だった。中大には「拾われた」と表現する。週3度、6~8種類の筋力トレーニングを行い、140キロ前後だったスピードは飛躍的にアップした。寮の食事に加え「筋肉が喜ばない」と、鶏肉中心のメニューでタンパク質を補給。映画「ロッキー」にあこがれ、ジョッキに生卵を割って飲み込んだこともある。

 試合後は、ロッキーのようにマウスピースを外した。投球時に、歯を食いしばるため、かみ続ける。成り上がりの野球人生。頭は気合の丸刈りで通し、ドラフトイヤーの先にある未来を切り開く。【前田祐輔】