11年秋のドラフトには、10年に1度と称されたハンカチ世代を上回る実力派がめじろ押しだ。東洋大の左腕、藤岡貴裕投手(3年=桐生一)は最速150キロで1位競合が確実。日本ハム斎藤佑と同じ群馬出身で、11年の大学球界の主役を狙う。

 東都リーグ閉会式が行われた10月29日、神宮球場。東洋大・藤岡は、前日ドラフト会議で指名された選手たちの会見をのぞき込んでいた。「自分だったらあんなにしゃべれるかなあ、とか思いながら見てましたね」。高橋昭雄監督(62)に「見とけ」と言われ、そこにいるであろう1年後をシミュレーションしたのだ。

 昨年まで目立った成績のなかった藤岡が、戦国東都でブレークしたのは5月5日。あと1歩で4試合連続完封を逃したものの、39イニング連続無失点を記録した。6月の全日本大学選手権では決勝で東海大・菅野に投げ勝ち、MVPを受賞。抜群の安定感で「ビッグ3」の中でも競合確実と言われる目玉左腕になった。

 最速150キロを誇るが、「スピードよりキレ」が身上だ。「いい結果が残せなかった」と悔しさが込み上げた2年冬、長距離走を倍に増やし、体幹トレーニングに励んだ。体重移動がスムーズになって制球力が増し、ボールのキレが格段によくなった。130キロ台の直球でも三振が取れるようになり、秋は73イニングでリーグトップの81奪三振。春秋の12勝(3敗)中、8勝が完封で、巨人1位の中大・沢村にも勝っている。

 藤岡の向上心を刺激するのは、よき友でもありライバルたち。今秋披露したカットボールは、世界大学選手権でともに日本代表だった菅野と明大・野村から教わったものだ。3人は普段から仲が良く、この年末も集まって食事をした。「やっぱ菅野や野村と投げ合うのは楽しい。でも、対戦すると負けたくないんです」。全員所属リーグが違うため、公式戦で対戦できるのは、学生のうちは春秋の全国大会のみ。それ以降の勝負は-。プロ入り後のお楽しみとなる。【鎌田良美】