イチローの新打撃フォーム(左)。右は2016年マーリンズ時代
イチローの新打撃フォーム(左)。右は2016年マーリンズ時代

マリナーズのイチロー外野手(45)が、新打撃フォームでメジャー19年目のスタートを切った。日刊スポーツ評論家の和田一浩氏(46)がイチローの“変化”に迫った。

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打撃フォームを変えたと言っても、オーソドックスなスタイルに直したという感じがする。確かに今までよりも低く構え、トップを作る前にもう少しだけ低くなってから打ちにいっている。ただ、スッと真っすぐに立ってから、体の軸を移動しながら打っていた頃より、基本に忠実な打撃フォームだと思う。

頭の位置が上下するのは良くないが、動いているのはトップを作るまで。慌てて動かすのはダメだが、この時点までに上下するのはまったく問題ない。むしろ低くしてから打ちにいくことで、下半身、特に軸足の左足に力がたまっている。今までは投手側に体の軸を移動させながら“2軸”で打っていたが、前に移動しない分、ボールを呼び込んで打てるだろう。

今までが“天才的”な打ち方で、なぜ変えたのかは、本人に聞いてみないと分からない。しかし、一流の打者というのは年齢を重ね、体調の変化やケガの影響などに伴って、毎年微妙な変化を加えるもの。自分自身の問題だけでなく、相手が研究し、攻め方を変えてくれば、その変化に対応するのと同じ。むしろ、変化に対応する姿勢と能力がなければ、長い期間、打ち続けることはできない。

個人的に言うと、今の打ち方の方が好きな打撃フォーム。打ち方だけで言うなら、ゴロを打ってスピードを生かした安打は減るだろうが、鋭いライナー性のヒットは増えると思う。

イチローは「一流」ではなく「超一流」の打者。実戦から離れていたハンディを逆に利用し、思い切った打撃フォームを試行錯誤しながらつくり変えたのだと思う。アッと驚くような活躍を期待している。(日刊スポーツ評論家)

新打法でフリー打撃をするイチロー(撮影・菅敏)
新打法でフリー打撃をするイチロー(撮影・菅敏)