初登板の日本ハム吉田輝には、“憎らしい”ほどの落ち着きを感じた。評価したいのは、持ち味でもある直球で、空振り、ファウルを取る「努力」をしていたこと。これがなければ、プロの打者は抑えられない。

初回1死二、三塁、球界を代表する打者・広島鈴木を迎えた。2ボールとなり、鈴木が「直球1本」に張って待つ中、その直球でファウルを奪った。3回にも1ボールから直球でファウル。マウンドでやらなければいけないことが明確に分かっているなと感じたし、強力広島打線に通用した。

5回先頭の長野には、スライダーをフェンス手前まで運ばれた(左飛)。角度よく上がった打球が、それでもスタンドまで届かなかったのは、序盤からストレートの意識を相手に植え付けてきたから。もしその意識がなかったら、柵越えしていたボールだった。直球で空振りを取る努力を続けることは、こうした変化球の失投にも影響してくる。今後も努力を惜しまず、楽天則本のような日本を代表する投手になっていってほしい。

2四球の初回は31球を要した。どう立て直すかに注目したが、しっかりと試合の中で修正した。またテンポよく投げられるし、ストライクを先行させることもできる。これは教えられて身につくものではなく、彼が本来持っている能力、投手適性。120点のデビュー戦だった。(日刊スポーツ評論家、侍ジャパン投手コーチ)