今季は立ち上がりに不安のある日本ハム金子だが、この日の序盤はすばらしかった。すべての球種の制球がよく、走者は出してもあわてず一定のテンポでアウトを重ねた。相当注意して試合に臨んだのだと思う。

すごみを感じたのは3回2死二塁で吉田正を迎えた場面だ。オリックス打線の中で一番状態のいい打者。一塁も空いており、歩かせる手もあったが、バッテリーは勝負を選択した。

とはいえ、1発の怖さがあり、少しでも甘く入ればスタンドまで持って行かれる。ストライクゾーンの四隅で勝負…でもダメ。そこからさらにボール1個分、外すことが求められる。

初球は外角ギリギリを突き、2球目は腕を振って膝元のチェンジアップ。さらに3球目、スイングしても詰まってしまう内角のカットボールを投げ、4球目もゴロにしかならない低めのチェンジアップ。すべて誘いに乗ってこなかったため、結果的には普通の四球に見えるが、4球とも少しの間違いもない完璧なボールだった。

「何をしなければいけないのか」「何を起こしてしまうと最悪か」という状況を理解する勝負勘と、それを遂行する投球術はさすが。実績十分の投手が見せた「攻めの四球」だった。(日刊スポーツ評論家)