プロ野球の開幕を待ち望んでいるファンは気が気じゃない毎日を送っていると思う。それにも増して、私たちの身の回りを取り巻く社会情勢は日々刻々と変化しており、プロ野球開幕どころじゃない、という心境の人たちもたくさんいると推察する。不自由を余儀なくされているが、今はみんなでSNSなどを通して連携し、力を合わせて新型コロナウイルスの被害を最小限に食い止めたい。

ただ、人間というのは、どこかに希望や明かりが見えると、がぜんやる気や力が湧いてくるものだ。こんな状況でプロ野球の開幕について評論している場合か、と言う批判もあるかもしれないが、私はプロ野球の評論家として、置き去りにされつつあるプロ野球ファンにエールを込め「こう考えれば希望が持てる!~2020開幕へ向けて~」を届けたい。

まず、現状において5月以降の開幕が現実味を帯びており、このままだとレギュラーシーズンのように143試合(リーグ内の対戦が25回戦+交流戦3試合×6カード)を実施できなくなる。それを各リーグを18回戦制にすれば、交流戦18試合を含めて108試合となり、35試合少なくなる。これで1カ月強の日程短縮をカバーできる。

その上で、私はこういう変則的なシーズンこそ、CSの価値が最も発揮されると強く主張したい。考えてもらいたい。各チームのファンは、優勝を目指して応援する。そのためには、現行制度ではCS出場権獲得が必須になる。その最低条件へ、異例の108試合で挑むというのは、ある意味どのチームにも可能性が見えてくる。大チャンスのシーズンといえる。

勝負の世界では、分母が大きいほど戦力が強いチームが上位に行く傾向にある。それは、長期戦になればなるほど、チーム戦力の差、選手層の厚さの差が如実に出てくる。であるならば、仮に108試合で臨んだ場合、35試合も少ない中、どのチームにも希望が持てる日程という見方はありではないか。こんな深刻な社会情勢だからこそ、逆に期待が出てくる。

そもそも、CSというのは日本では画期的な試みだった。6球団のうち上位3チームが進出できる。5割だ。そこに賛否があったと思うが、パ・リーグで04年から採用され(06年まではプレーオフとして実施)、セ・リーグも07年から同じシステムで戦うようになった。優勝争いというひとつの価値観に、Aクラスに入ることへの付加価値を与えたことで、消化試合は減り、ファンの盛り上がりを引き出すことに成功した。

MLBは今季からプレーオフに出場するチームを4チーム増やす。それまでの30チームから10チーム出場を、14チーム出場とする。全体の47%がプレーオフ進出できるようになる。同様にNBAは30チーム中の53%にあたる16チームが、NHLは31チーム中の52%に当たる16チームが、そしてNFLも32チーム中の44%にあたる14チームが、プレーオフ進出というシステムになっている。

スポーツ大国アメリカも、結果としては4大スポーツすべてにおいて、プロ野球のCSに近い形態を取っている。いうなれば、CSには先見性があったということだ。

試合数の削減は現実的なものとして考えつつ、国難にあるペナントレースであっても、CSがあるからこそ例年と同じように大興奮のフィナーレへ盛り上がっていけると考えてみてはどうだろうか。

今はスポーツの観戦にまで気が回らない方も大勢いると思う。そんな情勢では、生活を守ることで精いっぱいだとは思うが、スポーツも大切な生活の一部だと思うから、こうしてファンの皆さんに少しでも明るい材料をお届けしたいとの思いから考えてみた。

今は、できないことの理由を考えるのではなく、こうしたらできる、こうしたら楽しめる、そういう視点から取り組むことが、NPBも12球団の経営者にも求められていると思う。(日刊スポーツ評論家)

◆パ・リーグの前後期制 73~82年に採用し、前後期とも65試合制で順位を決めた。前期優勝球団と後期優勝球団でプレーオフを行い、その年のリーグ優勝球団を決定。前後期とも同じ球団が優勝した場合はプレーオフを行わなかった。当時は山田、福本、加藤らが在籍した阪急の黄金時代だったが、75年後期は前年5位の近鉄が優勝、80年前期は前年4位のロッテが優勝するなど、65試合の前期や後期だけならば前年3位以下の球団が7度優勝した。