球界を代表するエースの巨人菅野が、ヤクルト打線にKOされた。初回のピッチングを見る限り、ヤクルト打線は苦しむと感じていたが、6回に一挙5点を奪って逆転。菅野が「唯一」といっていい弱点をさらけ出した試合になった。

立ち上がりは完璧だった。投球内容を見ても、7球のうち5球が直球の力勝負。初球を打った1番の坂口も2番の山田哲も、高めの直球でねじ伏せていた。ところが、2回以降に投球内容が一変。2回から5回まで70球を投げて直球は23球。直球の配分は3分の1以下だった。特に打者の初球に直球を投げたのは15人中、投手の石川の打席を除けば3人だけ。とても本格派投手の内容ではなかった。

勝負どころの6回、先頭打者の坂口へ、カウント1-1から直球が高めに抜けた。この球で「危ない」と感じたが、結果的にもヒットを打たれて次打者の山田哲に逆転2ラン。その後も3点を奪われて降板。完全にスタミナが切れていたように見受けられた。

菅野の弱点は球数が多くなること。力を抜いて投げるのが苦手なのか、完璧を求めすぎてコーナーを狙いすぎ、球数が多くなる。それより、もっとアバウトにストライクゾーンで力勝負に徹すれば、結果的に球数が少なくなると思う。初回のように真ん中高めの直球でねじ伏せていけばいいのだが、打ち取ってはいたものの、初球の直球を狙われたことで、変化球が多くなった。

一方の石川は持ち味を発揮。菅野とは正反対のタイプで、力を抜いて投げられる。5回を投げて76球で、この時点で菅野より1球少ないだけだが、余力は十分だった。その後は試合がもつれ、石川に勝ち星も菅野の黒星も消えたが、興味深い投げ合いだった。(日刊スポーツ評論家)