楽天の試合前のシートノックに注目していた。他の評論家から野手が本番を想定しているように強い送球をしていると聞いたからだ。球場には行けないので担当記者を通じて確認しようと考えていたが、雨天でグラウンド状況が悪く、残念ながら行われなかった。シートノックは準備運動的になりがちで、今は連戦中だと行わないチームもある。それ自体は否定しない。だが意識高く臨めば試合に入っていく集中力は高まる。

2回の攻撃に表れた。ロッテ先発の二木をKOし、鈴木大がこの回7点目となる3ランを放つまで打者8人中6人がファーストストライクを狙った。基本は直球待ちだがスライダー、フォークにも対応していたのは変化球への意識も頭の隅に置いていたからだろう。データが整理され、個人としてもチームとしても狙いが浸透されていた。

無死一、三塁となって打者太田の時に初球に偽装スクイズを仕掛けた。年間に何回あるかという作戦。準備が徹底されていなければ、サインを再度確認しようとして、ぎこちなさが出てしまう。だが違和感なく作戦を敢行し、ロッテの守備陣は捕手からの送球も野手陣のカバーも中途半端になるくらいに意表を突かれた。二、三塁としてチャンスを拡大させ、太田もすぐに安易にゴロで1点を狙わなかった。追い込まれるまではヒット狙いのスイングでカウント2-2となってから頭を整理して、しぶとくゴロを放ち、追加点を挙げた。

こういう高い意識でプレーするのと、低い意識でプレーするのとでは、120試合で積み上がった時にものすごい差が出る。今の楽天が強い意識を持っていることが感じられる。シーズンではいい時も悪い時もある。年間を通して継続できるかが、上位を狙うカギとなる。(日刊スポーツ評論家)

楽天対ロッテ 2回裏楽天無死一、三塁、バントの構えをする太田(撮影・横山健太)
楽天対ロッテ 2回裏楽天無死一、三塁、バントの構えをする太田(撮影・横山健太)