「3番堂林」が誠也の先制打を呼んだ。1回無死一塁から菊池涼がバントを失敗した直後の1死一塁。カウント1-1からのスライダーを迷わず振り抜いた。結果は二塁打で、4番の前に1死二、三塁という絶好機を整えた。直後に生まれた、1回の4番の打点は今季2度目。1回に適時打で打点がついたのは今季初という。チームとして投手陣が崩れて3連敗した直後、エースを立てて臨んだ一戦で1回に4番の先制打で主導権を握れた意味は大きい。

ここまでの堂林の打撃に驚いているのはファンの方だけではない。監督として5年間見てきた私も驚いている。3回の二塁打も、カウント1-1から内角を意識させるようなボール球の直後に、その残像を残すことなくバッティングカウント(2-1)から真っすぐにしっかりと踏み込んで打ちに行った結果。今年は内角の直球をさばけるようになっただけでなく、仕留めるべき球を一振りで捉えられている。技術の向上に、これまでの経験から打席での落ち着きも生まれた。安打にしたスイングだけでなく、凡打の内容もいい。

打線は誰か1人が打てば勝つものではない。前後の打者がいかに機能するか、が重要になる。好調な打者が打順を変えると、打撃を崩してしまうこともある。特に広島の3番は「4番鈴木誠の前」と大きなポイントとなる打順。後続の打者を意識しすぎず、いかにこれまでのような気持ちと意識で打席に入れるか。堂林は今年初の3番として、十分な働きをした。(日刊スポーツ評論家)

広島対ヤクルト3回戦 1回裏広島1死二、三塁、鈴木誠は先制中前2点適時打を放つ(撮影・加藤孝規)
広島対ヤクルト3回戦 1回裏広島1死二、三塁、鈴木誠は先制中前2点適時打を放つ(撮影・加藤孝規)