広島森下は新人離れしている。初回に3連続四球で1死満塁。普通なら動揺してストライクを欲しがり、中へ投球が集まるのが投手の性(さが)だ。だが表情は冷静なままゾーンの隅を狙い、連続三振で切り抜けた。2、3失点しても、おかしくない立ち上がりだったが、1年目の5試合目の先発でなかなかできない。

6四死球で一見、乱れているが枠の外へ外れるから危険が少ない。31回2/3で16四死球と多い割に失点したのは初回に2試合、9回に1試合、この日の4回と4イニングしかない。勝負どころを察知できる投球ができている。5回まで4安打で計算上は“ヒット10本”打たれているが2失点に収めた。修正能力もあり、2回までは、かかとに体重が乗りすぎて左手が一塁側へ流れていたが、3回からはバランスが取れていた。

ベビーフェースにだまされそうになるが、星野仙一さん、川上憲伸のような明治魂もある。初回の連続三振の大城への3球目、パーラへの2球目の内角直球は3連続四球直後でも、これでもかと突っ込んで見逃しを奪った。甘いマスクの下に闘争心を秘めている。

1度登録も抹消された期間もあったように、スタミナは今後の課題だろう。だが投げるたびに成長する雰囲気がある。いい投手の条件は投球に強弱をつけられ、状況と己を冷静に見つめられ、7~8割は思ったところに投げられること。森下はすべてを兼ね備えられる能力がある。広島で大瀬良と2枚看板になるだろうし、日本代表に入る素質を持っている。(日刊スポーツ評論家)

巨人対広島 広島先発の森下(撮影・滝沢徹郎)
巨人対広島 広島先発の森下(撮影・滝沢徹郎)