阪神藤川球児投手(40)が今季限りで現役引退することが31日、明らかになった。阪神球団が同日、発表した。

   ◇   ◇   ◇

ここまでの野球人生、大変なことは多かっただろう。抑えというのは勝敗に直結するポジション。その精神的、体力的な過酷さは、やったことのある人間にしか分からない。

私も、特に大リーグでプレーしていた時に、本当につらい時期があった。当時のマリナーズは強豪チーム。投手全体のレベルも高く、1、2試合救援を失敗すれば代わりはいくらでもいるような環境だった。だから60試合に登板して60試合全部を抑えようと必死に投げた。気が付けば精神面だけでなく、体もボロボロになっていた。

藤川の場合、海を渡ったのは最初に阪神で大活躍した後だった。すでにコンディション的に万全でなかったのだろう。メジャー3シーズンで登板29試合。投げられずに悔しい思いもしたと思う。だが、その経験がこれからの野球人生で必ず生きてくる。守護神としての頂点と、思うようにならない悔しさの両方を理解している選手は多くはないからだ。

藤川の特長といえばあの浮き上がるような素晴らしいストレート。今では160キロ近い球を投げるピッチャーが何人もいるが、藤川のように直球で空振りが取れる投手が何人いるだろうか。引退後は、あのきれいなスピンの利いた真っすぐを投げる技術を、後輩たちに伝えていってほしいと思う。だが、まだお疲れさまとは言わない。後半戦の試合が残っている。あと5セーブ。通算250セーブを達成して、名球会入りを成し遂げてほしい。頑張れ。私は名球会で待っている。(日刊スポーツ評論家)