矢野阪神は自力V消滅一夜明けも首位巨人に敗れ、13年連続巨人戦の勝ち越しなしが決まった。伝統の一戦と言われる黄金カードだが、この日も優勝マジックを3つ減らす引き立て役に甘んじ、東京ドームは今季8戦全敗で通算も3勝12敗。日刊スポーツ評論家の桧山進次郎氏(51)は「阪神ファンも寂しがっている。悔しいでしょう」と猛虎の意地を求めた。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

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伝統の一戦が泣いている。阪神は今季、東京ドームで8戦全敗。対巨人は13年連続勝ち越しがなくなり、この夜も優勝マジックを3つ減らす情けない役回りだった。

桧山 巨人をたたかないと優勝はない。これだけははっきりしてます。ぼくも経験していますが、巨人との直接対決を前にするとワクワクしたし、怖くもあったし、緊張もした。特に生え抜きの選手はイヤというほど味わってきた。巨人に勝たないと、絶対に優勝できない。そこは今の若手ってどう思ってるんでしょうか? 阪神ファンは寂しがってるし、悔しいでしょうね。

先発青柳は、スタメンに投手の田口も含めて9人の左打者(若林は両打ち)を並べられた。しかも坂本、岡本を欠く2軍クラスが主体のオーダー。だが制球も甘く、1回の田中俊の先制本塁打を手始めに、立岡、若林らの若手に打ち砕かれた。左右打者別の被打率は、右打者の1割8分6厘に対して、左打者になると3割1厘まではね上がった。

桧山 ぼくが左打席に立ったとしても、今の青柳は怖くないでしょうね。それは三振するボールがないと思うからです。実際、24人の打者から奪った三振は1つでした。低めに投げてゴロを打たせようという意識は感じられた。でも、もともと制球力ではなくボールの勢いで勝負するタイプで、ストレートの球威を欠くのは致命傷です。

打線が奮起して8、9回に集中打で6点をかえした。だが、田口に7回まで1安打に抑えられたことと、前半の7失点が重くのしかかった。2位にいながら、首位巨人との対戦成績は3勝12敗。今季最大、11・5ゲームもの差が開いた。

桧山 巨人との差は、一言でいうと緊張感だと思います。一投一打に気を抜いていない。守備力の違いが投手を助け、走塁の細かさは打者をアシストした。相手チームはちょっとしたスキにつけ込まれる。チームからは「いくらでも代わりはいますよ」という厳しさも伝わってくる。ただ阪神は5回に、ボーアが吉川尚の一ゴロに飛び込んで好守を見せた。そういう姿勢をファンに見せながら、勝ちにこだわって戦い抜いてほしいですね。

巨人対阪神 5回裏巨人無死一、三塁、若林に右前適時打を浴びる青柳(撮影・鈴木みどり)
巨人対阪神 5回裏巨人無死一、三塁、若林に右前適時打を浴びる青柳(撮影・鈴木みどり)