阪神高橋遥人投手の113球は今までの球威で押すイメージではなかった。最速145キロ。150キロを1球も計測することなく9回を投げきった。

山田 高橋の投球にはこういう一面もあるのかと思った方が多かっただろうね。ペース配分? 違う。イメチェン? それも違うな。高橋がいつもと違った姿をみせたのは、なにも高橋が変わったのではない。それは捕手坂本誠志郎のリードにある。坂本が“違う高橋”を引き出したということだ。

計30人の打者と対戦したが、なにも変化球を多投したわけではなかった。自己最多14三振の内訳はストレート系が11、変化球が3だった。

山田 坂本という捕手は梅野の控えに回っているが、よく打者を観察しているのがみてとれた。簡単にいうと緩急ということになるんだろうが、「緩」に重点を置いた。いつもは直球を意識させて変化球で勝負だった。それとは真逆で、変化球によってストレートを生かした。俗にいう投球術で勝ったということだ。

この試合までも好投しながら勝ち星は思ったように伸びなかった。変身したということなのか。

山田 それも違う。これからこの投球をずっとやるのは間違いだ。力で抑え込むのが本来の姿であることに変わりはない。ただこういう抑え方もあるということを体で覚えたらいい。それをアシストしたのが坂本だった。今年の巨人大城はよくやっている。だがこの一戦に関しては坂本との差がでた。巨人岡本を抑え、阪神は大山に24号本塁打がでた。

山田 巨人バッテリーは大山に打たれるべくして打たれたらあかん。こういうのが投手と野手の信頼関係を崩し、チームを破綻させる。本塁打王争い? 投手の最多勝も同じだが、上にいるほうが苦しく、難しい。これからだ。【取材・構成=寺尾博和編集委員】