ひと言で藤浪を評すなら「言うことなし!」ですよ。投げっぷりは立派なもん。先日のキャンプ評論では「いい顔してる」と言ったけど、今日の顔つきは普通。すべてが、本来の藤浪に戻ったということです。

何球かは引っ掛けてましたが、次の球はいいコースに行く。抜け球もないし、田中広に出した唯一の四球も際どいところ。ボール球になっても、そう遠くは外れていない。良くなかった時は、四死球を出すとまた球が暴れ出して、連発するケースが多々あったと思う。でもこの日は、何で今まで暴れてたんだろうっていうぐらい、ストライクゾーン近くに投げていました。

ワインドアップも効果的。ただでさえデカくてスケールが大きいのに、打者はより威圧感を感じたんじゃないですか? しっかり体重を乗せて投げているから打者を押し込める。2回はクロンに芯で捉えられたけど、定位置より少し後ろの右飛になった場面が分かりやすい。真っすぐが速くてスライダー、フォークもそこそこのゾーンに来る。そうそう連打は食らわんですよ。まだ2月のこの時期で、初回先頭打者への初球が154キロ。シーズンでは160キロ台が出るでしょう。

再三けん制を投げていたのも、自身のフィーリングの良さの表れでしょう。どこに投げるか分からんと危うい時は、あまりけん制できなかったけど2度、3度と投げていた。マウンドさばきにゆとりと自信が出てきて、自分でも大丈夫と感じている証拠でしょう。

インステップ気味でしたが、それでいいんです。その投げ方で結果を出してきたのに、直そうとしておかしくなったのだから。藤川球児君にもアドバイスをもらっているようで、吹っ切れたのもあるんじゃないですか。藤川君は余計なことは言わないけど、ぽろっといいこと言いますからね。

さすがの投球を見せた森下もかすむぐらい、藤浪がスケールの大きさを出した投げ合いでした。やっぱりすごい投手ですよ。今年の阪神の先発陣が、西勇と藤浪中心で回っていくと確信した試合でもありました。シーズンに向けて、しっかり体を作って、さらにレベルアップしてもらいたい。(日刊スポーツ評論家)

練習試合 阪神対広島 2回を終えベンチへ戻る藤浪(撮影・清水貴仁)
練習試合 阪神対広島 2回を終えベンチへ戻る藤浪(撮影・清水貴仁)