負けられない巨人が意地を見せ、阪神戦での同一カード3連敗を阻止。先発の高橋は、今後に向けて一皮むけたピッチングをしたし、スタメン捕手で出場した炭谷も、貴重な追加点になる犠飛とベテランらしい安定したリードで勝利に貢献した。負けたとはいえ阪神も、これといったミスもなく、優勝候補同士の好ゲームだった。そんな中、心配になったのが、大物ルーキーの佐藤輝だった。

オープン戦で大活躍したバッティングは、完全に影を潜めてしまった。「これは重症だな」と改めて感じたのが、第1打席の三振だった。内角を攻められ、カウント2-2からの5球目は、真ん中低めストレートだった。見逃せば完全なボール球。この高さの変化球であれば空振りでも仕方ないが、ストレートでの空振り。自分のストライクゾーンが完全に狂っている証拠。開幕後、どのチームにも徹底的に内角を攻められ、低めや外角球の見極めが狂ってしまっている。

負けず嫌いの性格が裏目に出ているのだろう。内角を攻められ、その内角球を「やっつけてやる」とムキになっている。残りの3打席も、すべて同じような攻め方で打ち取られていた。打者が内角球を意識しすぎると、体が開くようになり、バッティングを崩す原因になる。強打者が不振に陥る典型的なパターンに陥っている。

打開策は2つある。ひとつは内角の見極め。何でもかんでも振っていては、バッテリーは甘いコースに投げる必要がない。佐藤輝の一番の持ち味はパワー。ポイントを近づけて詰まったとしても、振り遅れたとしても、逆方向にホームランにできるパワーがある。このパワーがあるのだから、もっとミートポイントを近づけ、球をしっかりと見極める意識を強く持った方がいい。

そしてもう1つの打開策は逆方向の打撃。内角球の見極めと原理は同じで、逆方向を意識すれば自然にミートポイントは近くなり、球の見極めにもつながってくる。逆方向に打つと長打が打てなくなる打者ではないだろう。

このまま内角を追い掛け続けたら、相手の思うつぼ。配球というものは「追い掛ければ逃げるし、待っていれば近づいてくる」という原則がある。いつまでも内角を追い続ければ、甘いストライクゾーンにはこない。逆にボールゾーンを見極められるようになれば、ストライクゾーンで勝負するようになる。乗り越えなければいけない“プロの壁”を打ち砕いてもらいたい。(日刊スポーツ評論家)