阪神は大山、西勇が消える非常事態にも踏ん張った。しかし、もはや勝たないと意味がなかった。

梨田 まさかの西勇のアクシデントだが、伊藤将をベンチ入りさせていたことで負けなかった。それと坂本(阪神)が打つほうで目立ったが、捕手としても低めの捕球の良さが目についたし、配球面もツーシームの使い方に特長があった。それでもチームがずっと重苦しいのは反発力に乏しいからだろう。

近本を3番に起用し、1番は島田で、中野が2番のニューコンビだった。だが3番近本が3安打も、チームは2点止まりだった。

梨田 大山がいなくなって4番にマルテを据えると、近本の3番は考えられることだ。でも近本が3番に入っていくらヒットを打っても、1、2番が機能しないと点にならない。7回2死から中前打で出塁した島田には走ってほしかったが…。作戦的に8回無死から近本が左前打で出塁しても、4番マルテで策を講じようがなくゲッツーだった。もちろん出塁率の高い近本の理想は1番。結局はサンズが不振、大山故障、佐藤輝も調子が上がってこない。3番がいない。

今シーズンの「3番」に起用したのは、マルテ、サンズ、ロハス、近本、糸井、糸原、陽川、小野寺の計8人。10月に入って11試合を消化したチームの平均得点は3点を切る。

梨田 ヤクルトが中日戦に3点で逃げ切ったように、3点でも勝てるケースはある。でも現状の阪神は大勝がなく、打てない、つながらないで苦しい。これで伊藤将は先発調整に入るだろうし、リリーフは及川が打ち込まれたことで、アルカンタラが評価を上げているのだろう。でも故障者も出てきている上に投打にいろいろなところが崩れている。巨人にもいえることだが、CS(クライマックスシリーズ)はいかなる勝ち方を描いているのだろうか。そこが見えなくなった。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

巨人対阪神 2回裏巨人2死三塁、西勇は自らベンチへ手を挙げてマウンドから歩み出し降板する。右は福原コーチ(撮影・加藤哉)
巨人対阪神 2回裏巨人2死三塁、西勇は自らベンチへ手を挙げてマウンドから歩み出し降板する。右は福原コーチ(撮影・加藤哉)