2位の巨人がDeNAに負け、首位のヤクルトが中日に快勝した。これでゲーム差は10に広がった。1人のOBとしてヤクルトの快進撃はうれしいのだが、野球人として見ると、セ・リーグのペナントは寂しい限り。何よりも危機感を抱くのは、2位にいる巨人がヤクルトに圧力をかけられるような戦い方ができていないからだろう。

チーム浮上の可能性は、若い投手陣のレベルアップだと思っていた。今試合は6月9日の西武戦以来の先発となったルーキーの赤星だった。前回の先発は5回を投げて1失点(自責0)で3勝目を挙げたが、5四球を与えている。持ち味の制球力が乱れていただけに、どう立ち直っているか、注目していた。

結果は4回5失点。立て直したというより、内容は悪くなっていた。制球力で勝負をしなければいけないタイプだが、真っすぐが高めに浮いていた。

球質を比べても、春先より悪くなっている。右打者の外角低めに決まる真っすぐが、以前はマッスラ気味の低めに集まっていたが、シュート回転している。簡単に言うと“抜け気味”の真っすぐが多く、体が開いている証拠。打者の立場からいうとボールが見やすく、球威があるタイプではないので怖さも感じない。よく4回まで投げてくれたな、という評価しかできなかった。

ただでさえ大卒ルーキーはこの時期に疲労がたまる。しかし間隔を空けて立て直し期間があっただけに、疲れがたまっているということはないだろう。不調の要因はフォームの崩れが挙げられる。

キャンプから開幕までの赤星は、それほど開いて投げるフォームではなかった。しかしテークバックからトップを作ったときに持っているボールが外側を向いてしまっている。

こうなると腕は振り遅れ気味になり、シュート回転しやすく、抜け球が多くなる。右打者は内角に食い込んでくるボール球に手を出さないように注意すればいい。それほど球威がないだけに、攻略は難しくはならない。

気になるのが、巨人の投手は腕が振り遅れて体が開く投手が多いこと。赤星のように、それほど開かないで投げられていたタイプも、時間がたつと開いて投げるようになってくる。

大勢のように、多少開いても球威でねじ伏せられればいい。ただ、長いイニングを投げる先発投手は、そうはいかない。先発の間隔を空けてもらっているのだから、自分自身でフォームを矯正する時間を作らなければならない。

赤星だけでなく、2年目の山崎伊にも同じ傾向がある。同じ傾向で悪くなるのだから、どうしてそうなってしまうのかを考え、立て直せる態勢作りが急務だろう。チーム防御率も悪く、失点が得点を上回っている現状で2位にいるのだから、若い投手陣が立ち直れば巻き返せる可能性はある。(日刊スポーツ評論家)

巨人対DeNA 2回表DeNA2死一、二塁、蝦名に適時打を許しさえない表情の赤星(撮影・垰建太)
巨人対DeNA 2回表DeNA2死一、二塁、蝦名に適時打を許しさえない表情の赤星(撮影・垰建太)