優勝はほぼ間違いないヤクルトだが、この後の短期決戦に向けての不安がある。コロナで戦線離脱中の高橋奎の状態がどうなのか? どこのチームも短期決戦では好投手を惜しみなくつぎ込んでくる。それだけに、先発して好投してくれる投手の存在は大きく、今試合にプロ入り初先発したドラ1ルーキーの山下がどういうピッチングをするか、注目していた。

さすがに緊張していたのだろう。立ち上がりから真っすぐが高めに浮いていた。連打を浴びて無死一、二塁、3番の阿部が内角の真っすぐを無理やり進塁打を打とうとし、逆方向に打って一ゴロ併殺。相手に助けられ、無失点で切り抜けられた。

この後も走者を出しながら4回まで無失点。5回には2死一、三塁からA・マルティネスのセンター前タイムリーで1失点。続く高橋周にも左中間への二塁打を打たれて降板した。

初登板が初先発で、4回2/3、2失点なら合格点。5回の失点も1死一、二塁からのショートゴロで併殺が取れていれば無失点。高いバウンドでセカンドの山田が一塁への送球を諦めてしまったが、打者走者はビシエド。投げていれば微妙なタイミングだったし、ルーキーが投げているのだから、バックがフォローしてもらいたかった。

今後は楽しみな左腕なのは間違いない。ただ、ポストシーズンを見据えて使えるかを判断するなら「分からない」と言わざるを得ない。

打たれた9安打中、左打者に6本打たれている。これは左打者の内角へ厳しく投げられていないから。真っすぐがスライダー回転するため、右打者の内角へはいいのだが、左打者の内角が甘くなりやすい傾向が見られた。初回に真っすぐが抜け気味で高めに浮いていたため、左打者の内角を攻めづらくなっただけかもしれないが、右打者より左打者に打たれやすい投手だと、リリーフでは起用しにくい。

先発で起用するならば、もう1試合は投げさせたいだろう。なんといっても初登板で緊張しただろうし、左打者の内角も投げられないわけでもなさそう。3個の四球を出しているが、コースを狙って投げたもので、制球力が悪い感じもしなかった。

クロスに投げる真っすぐがスライダー回転する投手は実戦向きが多い。高橋奎の代役を期待するのはさすがに荷が重いが、どこかで先発できるぐらいの力量は持っていそうだった。(日刊スポーツ評論家)

ヤクルト対中日 5回表途中で降板し、ヤクルト高津監督(右)からねぎらいを受ける先発の山下(撮影・江口和貴)
ヤクルト対中日 5回表途中で降板し、ヤクルト高津監督(右)からねぎらいを受ける先発の山下(撮影・江口和貴)