アジアの貧困に初めて触れたのは14年前だった。ベトナムの首都ハノイで、小学生くらいの女の子が弟の手を引き、とぼとぼと歩いている。片手に空き缶を持ち、欧米人の観光客を見つけると腕を差し出す。物乞いだった。学校にも行けず、昼間から雑踏に溶け込んでいた。川にはゴミやヘドロがたまり、薄いトタンで覆われた家に住む。こういう現実を初めて知った。

 大切なことだから、何度でも書く。阪神鳥谷が15年から一般社団法人「レッドバード」の理事として、アジアの恵まれない子どもに靴を届ける活動を行っている。昨年12月にはフィリピン・マニラのトンド地区を現地訪問。子どもに靴を手渡し、キャッチボールで交流した。傷だらけのはだしで歩く子どもも多く、全国から集まった1万2272足は、命をつなぐ宝物だ。

 昨年10月からは靴とともに未使用の文房具を募る。理事の赤嶺昇沖縄県議会副議長が「現地からは『文房具を』という要望もありました。レッドバードは子どもたちへ、というキーワードがあります。継続して取り組むことが大事です」と話せば、鳥谷も「文房具は子供たちの学習につながり、心の表現にもつながります」と呼びかけている。

 世界が、とかく独りよがりになりがちだからこそ、分け隔てなく他者に思いを寄せる心が尊い。レッドバードの公式サイトでも活動の様子が分かる。善意の送り先は〒901・2121 沖縄県浦添市内間5の1の23 株式会社丸三本社内「一般社団法人レッドバード事務局」へ。送料は送り主の負担でお願いします。【阪神担当=酒井俊作】