携帯の着信表示を見て背筋が伸びた。PL学園の黄金時代を築いた中村順司元監督(現名商大総監督)から、今月中旬に電話がかかってきた。ちょうど、阪神-西武戦のナイターをテレビ観戦しながら、居ても立っていられないといった感じだった。

 「孝介(福留)はどこかケガしてるのかな? 今のなんかちょっとおかしいもんね。右肩が開く。これじゃあインコースが詰まる。アウトコースが届かないよ」

 いつものやさしい語り口だが、交流戦で不振を極めていた教え子の状態が心配でしょうがないといった様子だった。のちに福留が右手中指を負傷しながら戦っていることが判明したが、今思えば恩師は何となく気づいているようだった。

 福留が母校を卒業してから、もう20年以上が経つ。それでも教え子の近況はやはり気になる。そして活躍すれば自分のことのようにうれしい。うらやましい師弟愛だ。中村元監督の言葉を聞いてそう思った。【阪神担当=桝井聡】