野球というスポーツは守備が試合を流れを左右する。9月28日の中日戦(ナゴヤドーム)。3-1と阪神リードで迎えた5回裏だった。

先頭の中日大島が遊撃へ詰まった当たりを転がす。阪神の遊撃手・森越は必死にさばくも間に合わず内野安打。続くビシエドが放った二遊間への打球を森越は好捕したが、今度は送球が高く浮いた(記録は内野安打と送球エラー)。無死一、三塁。アルモンテの打球はまたしても遊撃へ。森越は懸命に追うも、はじいて足で蹴る格好となり失点(記録は内野安打)。これがきっかけで同点とされ、6回に決勝点を許して敗れた。

3者とも守備側としては不運な当たりが続いての失点。後日、当時2軍を担当していた藤本敦士内野守備走塁コーチ(41)はどう見ていたか、尋ねてみた。

「最初に1つ(ミスが)出てしまって、負の連鎖というか。普段の森越の動きじゃなかったね」とまずは懸命にプレーした森越を思いやった。そして言葉を続けた。

「すごくわかるんだよ。取れるアウトを取れないのが一番つらい。僕も現役時代、もう自分のところに飛んでくるなと思ったりもしたし。プロだから極端な話、もう次はないかもしれない。1軍の怖さというかね。どう切り替えるか。強くなっていくしかないね」

17年ぶりの最下位に沈んだ阪神は、矢野新監督が就任し、新体制がスタート。藤本コーチは1軍に配置転換され、現在は高知・安芸での秋季キャンプで連日ノックを打つ。踏ん張りどころで、どちらに転んでもおかしくない試合を制すには、隙のない守備が必要だ。「1軍の怖さ」を胸に、虎の内野陣を鍛えあげる。【阪神担当 吉見元太】