交代を告げられがっくりとベンチに戻る福谷浩司(2018年5月29日撮影)
交代を告げられがっくりとベンチに戻る福谷浩司(2018年5月29日撮影)

知り合いにゴルフのトップアマが何人かいる。その内の何人かは「イップス」に苦しんでいる。パッティングで手が動かなくなる、アプローチショットでザックリする、ドライバーでのバックスイングが上がらない…。記者はまだ下手なので、かかる気配もない。

野球でもイップスになる。中日にも、投球イップスと戦う選手がいる。6年目の右腕・福谷浩司投手(27)だ。プロ入り2年目の14年に72試合に登板、2勝4敗11セーブ、32ホールド、防御率1・81の好成績を残した。翌15年も19セーブを挙げるなど結果を残したが、一塁への送球でイップスを発症した。「イップスと気付くのに1年ほどかかりました」。その期間に、送球だけでなく、投球の際にも影響が出るまでになっていた。

自ら関連の本をむさぼり読み、東京にいるイップス研究者にも会って克服に立ち向かった。「勘違いされることがありますが、イップスになるのはメンタルが弱いとかじゃない」。初めてイップスで失敗した場面を思い返し、直視することで徐々に症状は緩和されてきた。今季は29試合、0勝1敗4ホールドに終わったが、秋季キャンプでは、積極的にブルペンで投げてきた。「いい球が増えている。これをコンスタントに出したい。今年は開幕から1軍にいられなかった。来年は開幕からチームの力になれるようになりたい」。来季の契約更改交渉では500万円ダウンの2300万円(金額は推定)でサインした。暗さはなかった。真っすぐ見据えながら話す福谷の目には、克服への自信が見えていた。【中日担当 伊東大介】

秋季キャンプ中にブルペンで与田監督(右)のアドバイスを受ける福谷浩司(2018年11月16日撮影)
秋季キャンプ中にブルペンで与田監督(右)のアドバイスを受ける福谷浩司(2018年11月16日撮影)