ヤクルト大下佑馬投手(26)が、故郷の地で今季への思いを一層強くさせた。

4月9日広島戦で2番手として9回のマウンドに上がった。先頭に四球を与えるも、その後はしっかり抑えて試合を締めた。“凱旋(がいせん)登板”なのではと聞くと「全然です」と答えが返ってきた。

プロになって、昨年8月22日以来2度目となるマツダスタジアムのマウンドだった。広島・崇徳高時代は、地方大会の開会式でのみ足を踏み入れた“聖地”。来る度によみがえるのは、社会人時代の苦い記憶だ。17年にヤクルトにドラフト指名をうける直前、クライマックスシリーズに向けた調整のため田中、菊池涼、丸ら主力がずらりと並んだ広島とマツダスタジアムで練習試合を行った。三菱重工広島のエースとして先発を任されたが、3回持たずにKOされたという。「先発したのに9失点くらいして、ボコボコにやられた。広島は当時のベストメンバー。どうやって打ち取ったらいいか、分からなくなってしまうくらいだった」。プロ入り前に、洗礼を受けていた。

実はヤクルトからドラフト2位で指名された時にも、強力な広島打線のイメージが払拭(ふっしょく)できていなかった。「自分がはたして通用するのか、という不安があった」と明かした。それでもシーズン途中から1軍に昇格し、中継ぎとして23試合に登板。先発も2試合経験した。「なんとか食らいついてできているということは、成長できているのかなと思う」と控えめながら手応えを口にした。

今季は開幕1軍をつかみ、ここまで6試合に登板して計7回1/3イニングを1失点。「数字だけを見たらいいけど、内容はダメ。もっと信頼されて、チャンスをもらったところで結果を出せるように、準備していきたい」。マツダスタジアムで試合前練習を終え引きあげる際には、スタンドのファンから「頑張って」とたくさん声をかけられた。胸を張って“凱旋(がいせん)登板”と言える日は、そう遠くないはずだ。【保坂恭子】