ソフトバンクがペイペイドームで試合をする場合、試合前練習では、一塁側ベンチの前に「バント練習」のスペースができる。打撃マシンの球でバントをする場所なのだが、17日の練習では、栗原が途中から「空振り」をし出した。バットに当たったら大変なことになるが、プロだから上手に空振りをする。タイミングを計っているのだろう。そのうち、打席のなかで構えを右に90度向きを変えて、投手方向に正対するような姿勢で「空振り」し始めた。

試合前、選手らは個々に調整して試合に臨む。ベテラン松田宣はティー打撃の最初に必ずソフトボールくらいの大きいボールで始め、後方から投げる球を打つこともする。柳田はティー打撃でわざと球を上げたりするし、フリー打撃ではフルスイングする日もあれば、半分くらいの力でスイングする日もある。今季よく「丁寧に打ちました」と口にするが、まさに丁寧に打ち返している。グラシアルはほとんどセンター方向へライナーを打っている。いわゆる「ルーティン」なのだろう。ホームチームが本拠地で有利と言われるのは、試合でファンが多くいることはもちろんだが、こういう自分ペースの練習がしっかりできることもあるのだと思う。

思い出したことがある。メジャーで二刀流に挑んでいる大谷の打撃練習に驚いた。日本ハム時代に見たが、打球がほとんどセンターやや左よりのスタンドに放り込んでいた。まるでノッカーのようだった。メジャーでのホームランの方向を見ると、思わずうなずいてしまう。

この日は土曜日で試合開始が午後2時だったため、開場が3時間前の午前11時だった。ファンにとって主力選手が、打撃練習を行う光景がしっかり見られる。お目当ての選手がどんな練習をしているか。「ルーティン」を楽しむ最高の時間かもしれない。【ソフトバンク担当・浦田由紀夫】