阪神は21日に2月1日から沖縄・宜野座で行う1軍キャンプメンバー42選手を発表した。主力選手に加え、ドラフト1位の佐藤輝明内野手(21=近大)、高卒2年目の西純矢投手(19)、井上広大外野手(19)が名を連ねた。記者が個人的に「お!」と思ったのは、大卒2年目で育成選手の小野寺暖外野手(22)がいたことだった。

42選手で唯一の育成選手。小野寺は1軍キャンプ帯同を知った時に「ウエートをしてたんですけど、普段より力が入って、普段より重いのを上げました。10キロくらい重いのをあげました」と、興奮を隠しきれなかった。「(昨年11月の)フェニックスから1軍キャンプを目標にしてやってきたので、選ばれたことはうれしいです」。同リーグではプロ初となる逆方向への本塁打を放った。取材ノートを見返すと、平田2軍監督も「彼はセンターを中心に右にも打てるバッター。お見事だよ」と、試合後に目を細めていたことを思い出した。

小野寺は中学時代から母子家庭で母由子さん、兄仁さんとの3人暮らしだった。19年ドラフトで阪神から指名を受けたときには、「大学にも奨学金で行かせてもらって、育成ではそれを返す足しにはならない。必ず支配下に上がって、レギュラーになって母親を楽にさせたい」と悔し涙を流した優しい男。1軍キャンプ帯同は、有言実行への1歩になる。「1番は親に伝えます」。うれしい報告も待ち遠しかった。

昨年5月10日の母の日には、自身のインスタグラムのストーリーで「おかん、健康を守ってくれてありがとう」と記し、母とのツーショット写真を投稿した。あと10日でキャンプイン。小野寺の恩返しが始まる。【阪神担当=只松憲】