置き去りにされたヘルメットが困惑気味にコロコロと転がる。そんなことはお構いなしに、虎の新外国人ロハスは脇目も振らずに三塁ベースを蹴った。

両腕を目いっぱい振り、両足を目いっぱい回転させ、猛突進のままホームイン。そそくさと二、三塁間まで回収に走るボールボーイさんの姿を眺めながら、新たな「愛され助っ人」誕生の予感に心が踊った。

4月30日から5月2日までの3日間、由宇球場で阪神2軍を取材する機会に恵まれた。広島2軍本拠地で初めてロハスの一挙手一投足を目の当たりにしたのだが、個人的なハイライトシーンは一塁走者としての激走だった。

もちろん、どちらも推定飛距離125メートル級の2戦連発には迫力を感じた。広角に打ち分けられるバットコントロールにも驚いた。それでも…もっとも印象に残ったシーンは、ヘルメットを置き去りにしたあの瞬間以外に考えられない。

5月1日、由宇3連戦の2戦目。8回表に先頭で左前打を放った後、井上の左中間適時二塁打で長駆した場面だ。猛ダッシュの途中にヘルメットが吹っ飛び、最後はヘッドバンド姿でホームに生還。一塁ベンチの虎ナインが大いに沸いたのは言うまでもない。

この試合後、平田2軍監督は同じく新助っ人の右腕アルカンタラとともに、ロハスの姿勢を褒めたたえていた。

「ウオーミングアップから手抜きをせずにしっかりやってくれる。グラウンドをならしてみたり、言われなくても日本のシステムを理解してくれている。非常にありがたい」

そんな謙虚さが早くもナインに受け入れられているのだろうか。アーチをかけた後、仲間は口々にファーストネームの「メル」を叫んで喜んでいた。

現在セ・リーグ首位を快走している虎の助っ人勢はポジションを問わず皆、ナイスガイばかり。野手にしても、サンズ、マルテの2人は大物ぶらない気さくな性格ですっかりチームに溶け込んでいる。打つだけでなく走塁や守備にも懸命に取り組む姿があるから、仲間からリスペクトされている。

では、ロハスはどうだろうか。時には強風で砂ぼこりが舞い、時には冷たい雨が降り注いだ由宇で、打撃はもちろん走塁と左翼守備にも全力を注いでいた。

グラウンドのファウルゾーンが広いことでも知られる由宇。フル出場した1日の試合後には「この球場はレフトからベンチまでが遠いから少し疲れたよ」と笑わせもしたが、攻守交代の際もきっちりダッシュを貫いていた姿が印象深い。

1軍外国人枠争いは激しさを増すばかりだが、新助っ人が甲子園でスポットライトを浴びる瞬間は刻一刻と近づいている。あの激走を見る限り、ロハスもいずれハッスルプレーで「愛され助っ人」の一員になるのではないかと、勝手に想像している。【遊軍=佐井陽介】