パ・リーグの取材ではよく飛行機に乗る。札幌に福岡、ロッテはキャンプ地も石垣島だ。翌月の出勤シフトが社内で発表されると、すぐに飛行機を予約する。羽田-福岡便は絶対に窓側A席を押さえる。富士山を拝めるからだ。

このA席を「エー席」と呼ばないことを最近、航空業界で働くロッテファンに教わった。「アルファと言うんです」。ABCDはエー、ビー、シー、ディーではなく、アルファ、ブラボー、チャーリー、デルタ。羽田-石垣便で着陸直前に美しすぎる海と大地が見えるK席のKは「キング」と呼ぶそうだ。

なぜ。「BとD、MとNなどの聞き間違いを防ぐためです。安全上のミスにもつながりかねないので、世界共通の呼び方として採用されています」。一般にはなかなか認知されていない、いわゆる“業界用語”だが、なかなかに深い。アパレル業界で働くロッテファンからは「パッキン」という言葉を教わった。段ボールのことだそう。「身内や友人にも通じなくて」とのことだ。

野球界にも業界用語がある。ロッテの球団広報氏とそんな会話をした。例えば「ナイターデー」。ナイターの翌日にデーゲームを行う連戦“ナイター→デー”の意味ながら、プロ野球ファンには認知が低いかもしれない。「あがり、も業界用語かもしれないですね」と広報氏。先発投手が登板翌日や翌々日などに練習参加を免除されることだ。

「囲み」も瞬時にピンとこない言葉かもしれない。囲み取材。試合後に取材対象の選手などを、記者たちが文字通り囲んで取材する。コロナ禍では記者数人に絞って囲む「代表取材」が通例になっている。コロナ禍以前はスポーツ取材では「ぶら下がり」も多かった。歩きながら話を聞いたりする取材だ。

新聞社では「原稿」「デスク」が2大業界用語だと私はずっと思ってきたが、割とすんなり読んでいる読者がいることも知った。SNSでアンケートをとり、770人をご回答をいただいた。その結果「原稿」の認知度は75%、「デスク」の認知度は50%弱、といったところ。「両方とも意味が不明瞭」というご回答も2割を占めた。

「原稿」は、学生時代の原稿用紙から連想しやすい言葉かもしれない。ただ、私たち記者側が「原稿を書きました」とSNSなどでPRするのには、個人的にはどこか引っかかりがあった。読み手を主語に置けば、やはり「記事を書きました」の方が丁寧で分かりやすいのかなと思ってしまう。

「デスク」は、各記者が集めた情報を取りまとめ、価値判断し、記事の大小などを決めて、現場記者に例えば「50行書いて」などと発注する役割の人になる。「編集長」と言い換えるのは少し違うかもしれない。他社の状況は知らないが、基本的には管理職にあたるケースが多いようだ。

オチも季節感もまるでないが、ペナントレースも残り2カ月。担当記者としては1つでも多く、ロッテの勝利の記事を書きたい。【ロッテ担当 金子真仁】