考えてみれば、野球とは変わったスポーツです。
多くの球技は、ボールが特定の場所に入ったり、通過したりして得点となります。サッカー、ラグビー、テニスなど。いずれもボールの移動によって点が入ります。
ところが野球は、選手が塁を進んでいき、本塁まで戻って初めて点が入ります。たとえ外野フェンスの向こうに白球をはじき飛ばしても、打者がホームまで戻ってこないと点にはなりません。
つまり、球ではなく人間が移動して得点が生じる、極めて珍しい球技といえるのです。
ところで、バスケットボールで遠くから決めるシュートを「3ポイントシュート」といいますね。つまり「得点=point」です。これは日本人にも分かりやすいでしょう。
ところが野球の得点は、英語で「run」といいます。「2ランホームラン」「ノーヒットノーラン」の「ラン」です。
選手が4個のベースで区切られたダイヤモンドを回り、走ることで点となる。
得点に「point」ではなく「run」という単語をあてた。まさに言い得て妙。野球というスポーツを考えた先人の知恵に、感服せずにはいられません。
1936年(昭11)にプロ野球が始まってから2025年(令7)3月31日まで、6万6577試合が行われ、118万8170イニング2/3を戦いました。そして、のべ人数にして52万6955人が本塁まで移動しました。1チームあたりの1試合平均「run」は3・96点。何とも個性的な競技の季節を、今年も楽しみましょう。
私ごとで恐縮ですが、3月31日をもって日刊スポーツを退職いたしました。
プロ野球初観戦は、小2だった1974年(昭49)8月14日の太平洋-日本ハム戦(平和台)。試合は1-0で日本ハムが勝ちました。延長10回に助っ人投手のケキッチが代打で放った安打を契機に、高橋博士が左前に運び決勝点。これが、生まれて初めて見た「run」でした。
福岡県庁軟式野球部監督だった亡き父の影響で、それから野球に興味を持ちました。小5のころ、彼の「日刊スポーツはデータが充実しとるぞ」という一声で、後の人生は決まりました。
1989年(平元)の入社以来、何千何万の「run」に、心を躍らせてまいりました。仕事を離れて観戦する立場となるのは、37年ぶり2度目です。長い間ありがとうございました。
本日をもちまして、記者から読者へと復帰します。1万3150日ぶりです。存命なら本日ちょうど白寿の誕生日を迎えていた父は、泉下で今ごろどんな顔をしていることでしょう。【記録室=高野勲】(22年3月のテレビ東京系「なんでもクイズスタジアム プロ野球王決定戦」準優勝)




