高校野球の魅力を熱く伝える人気番組「熱闘甲子園」(ABCテレビ・テレビ朝日系列全国ネット)のキャスターを務める古田敦也氏が連載「野球の国から」の中で大会を分析する。6日の開幕を前に今大会への熱き思いを語った。

 
 

球児たちへのメッセージを色紙に込めた古田氏(撮影・大野祥一)
球児たちへのメッセージを色紙に込めた古田氏(撮影・大野祥一)

熱闘甲子園のキャスター5年目を迎えた古田敦也さんは、いつも通りのシャープな語り口の中に、甲子園が秘める無限の可能性に期待を込めた。

「今大会では誰が出てくるのか。どの選手が大会を通して成長していくのか。そこを見るのが、楽しみですね。絶対に誰かが出てくる。それが甲子園です」

一昨年の中村奨成捕手(広陵)ら、大会で急成長する選手が必ずいる。そんな新星を見つけるのが、何よりの楽しみだ。

熱闘甲子園はスタッフの情熱に支えられ、幅広く注目校を追っている。地方大会だけでなく、昨夏の甲子園大会で敗退した直後からの追跡であり、1年を通した取材の積み重ね。古田さんは「チームの野球に取り組む姿勢や背景など、いろんな切り口で選手、チームを追ってきました。それが熱闘甲子園のテイストです」と、端的に説明する。

昨夏、近江(滋賀)と金足農(秋田)の準々決勝では、近江1点リードの9回に金足農の劇的な2ランスクイズが飛び出した。このプレーは大会の1つのハイライトにもなった。当時2年生だった近江のバッテリーが甲子園に戻ってくる。古田さんは、林優樹投手(3年)にも「彼はピッチングができている印象です。カウントを整えてから、打者と駆け引きする。その駆け引きの中に見える工夫を注目したいですね」と熱視線を送る。

古田さん自身の甲子園への道は、兵庫大会3回戦で幕を閉じた。

川西明峰時代、ナインに向けて声をかける古田氏(本人提供)
川西明峰時代、ナインに向けて声をかける古田氏(本人提供)

「覚えていますよ。格上のチームとの対戦で、相手の右投手のスライダーがどうしても打てなかった。僕は4番でしたが、チャンスで打てずに、僕が打っていればと、思いながら涙を流しました。大学では野球をする考えはなく、これが最後だと…」

視力は0・6だったが、当時はまだメガネはかけていなかった。そして、その年、甲子園で未来のチームメートを甲子園の外野スタンドから見ることになる。

「市立尼崎を見に行きました。同じ兵庫県だし、外野でかち割りを買って応援していました。当時、外野席は無料。そこから池山を見ていました。僕らの世代の、兵庫のスーパースターでしたから。それが6年後、ヤクルトに入団したら池山がいて。確か、最初のころは緊張して『池山さん』って敬語だったんです」

汗と涙を流した青春の思い出は、何年たっても色あせることはない。今年の夏はどんなドラマがあるのだろうか? 勝ち抜いてたどり着いた末の最後の戦いこそ、忘れられない一瞬がきっとあるはずだ。【取材・構成=井上真】