8日まで10日間の日程で行われたU18ワールドカップ(W杯)。記者が韓国滞在中に感じたことをつづる。第1回は大会レギュレーション(規約)について。野球とソフトボールの世界統括団体「WBSC」が主催だったが、野球は世界的にはまだ発展途上の競技だという現実を見た。

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決勝進出か、3位決定戦か、はたまた敗退か。そんな状況で迎えた最終オーストラリア戦。敗れてメダルへの道は完全に断たれた。試合直後、中継局に語った永田裕治監督(55)の言葉に耳を疑った。「明日もありますから」。日本の試合中に別会場で米国が勝利。日本はオーストラリアに負ければ5位で、3決にも進めない。メディアや一部日本関係者は分かっていたが永田監督は、試合中に情報がベンチに伝わっていなかったことを認めた。

オーストラリア戦から一夜明け、取材に応じる永田監督
オーストラリア戦から一夜明け、取材に応じる永田監督

無理もない。試合前から日本チームも日本メディアも右往左往していた。主催者が公表しているWBSCのレギュレーションが何とも難解だったのだ。

WBSC主催大会で統一された規定がある。かなり事細かに決められている。

12チーム大会(今大会)の欄の順位決定方法を見ると、複数チームが勝敗で並んだ場合のシナリオがいくつか書いてある。3チームが並んだケースまでは書いてあるが、4チームとなると明記されていない。

今回、日本が決勝に進むには上位4チームの勝敗が並ぶ「四すくみ」以外になかったという。WBSCの広報担当は、最終オーストラリア戦の前にメディアと日本チームに対してそのように説明した。「レギュレーション通りだ」という注釈を添えて。

不思議なのは、なぜ日本に可能性が残るのか、ということだった。WBSCの回答は意外なものだった。「3チーム」が勝敗で並んだ場合は、当該チーム間同士の対戦成績が最優先される。しかし「4チーム」が並んだ場合は、当該間の対戦成績は飛ばして「当該チーム間のTQB(イニングあたりの得失点差)」を採用する-。広報の毅然とした口調での説明(英語)に、日本の報道陣はうなずきつつも、誰もがクエスチョンマークを浮かべていた。

ただ、日本にとってはありがたい。当該の対戦成績が優先された場合、台湾と米国が2勝1敗。日本と韓国は1勝2敗。無条件で日本が落とされてしまうからだ。TQB勝負なら米国に16-7と大差で勝ったメリットが生かされる。

4チーム間で並んだ場合の順位決定方法を明記していなかったWBSC側の「不備」のようにも思えるが、真相は現時点では分からない。いずれにしても、大いに混乱を招いたのは確かだ。競技の性質が違うとはいえ、伝統あるサッカーW杯ではあり得ないことだろう。世界的なスポーツとして野球はまだ歴史が浅いことを表す事象だった気がする。(つづく)【柏原誠】