日刊スポーツ評論家の田村藤夫氏(61)が、ニッカンスポーツ・コム内で「みやざきフェニックス・リーグ」をリポートしている。関東第一から1977年(昭52)ドラフト6位で日本ハムに入団。19年に中日を退団するまでの42年間、選手、指導者としてプロ球団に所属して球界を生きてきた。今年はじめて球界から離れ、今までとは違う視点からかつての職場を見る。主に2軍を中心に取材を続ける田村氏の目に、育成の場はどう映るのか。

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今年1年、主にファームを中心に評論家としての1年目を過ごしてきた。いきなり無観客試合が続き、本当に面食らったが、それでもイースタン・リーグが開催され、制約はあったが無事に取材ができた。

イースタンも夏場過ぎから徐々にスタンドにファンの方が姿を見せるようになり、日常のファームが戻りつつある。来年こそは春から熱気あるファーム公式戦を心から願っている。

そこで、ファーム観戦を楽しんでいるファンの方に、投手の見方をひとつ伝授したい。野球経験者にとっては初歩的なことかもしれないが、これから若手ピッチャーの成長を見守ろうという初心者の方にとって、少しでも参考になれば幸いだ。

投手の魅力はやはりスピードになるが、それはコントロールがあってこそ。では、コントロールがいいか、悪いか、それはどこで判断したらいいのか。

カウント球という言葉は聞いたことがあると思う。丁寧に説明すると、カウント1-0、2-0、2-1、3-1は、いわゆる「バッティングカウント」と呼ばれ、打者有利なカウントだ。ボールが先行しており、バッテリーからすればどうしてもストライクがほしいという特徴がある。

このバッティングカウントでは、バッターはストレート待ちをしてくる傾向がある。ストレートにタイミングを合わせて待っているため、ストレートでストライクを取りにいくと打たれる可能性が高くなる。そこで、バッテリーは変化球でストライクを取ることになる。この時、ストライクが取れる変化球の球種をカウント球と呼ぶ。

補足するが、1軍クラスになると、何度も対戦するため同じ2-0のバッティングカウントでも、同じ変化球でストライクを取ってばかりいると傾向が出て狙われるケースがある。そういう時は、裏をかいてストレートでストライクを要求することもある。

すべての持ち球がカウント球というのが理想で、オリックス時代の金子千尋がまさにそうだった。普通はカウント球を1つでも持っていれば一般的には1軍レベルといえる。先発ローテーションに入るなら、カウント球は2種類くらいあると、リードする捕手としては選択肢が増えてくる。

ファームで奮闘する投手が、いつかは1軍で活躍する姿を見たくて、ファンのみなさんもスタンドに足を運ぶと思う。私から言えることは、このカウント球をしっかり自分のものにできれば、1軍への道が見えてくる。安定したピッチングのためにはカウント球の存在は大きい。

ボールが先行してバッティングカウントになった時、投手がどの球種をカウント球に使っているのか、そしてしっかりストライクが取れているのか。そこをポイントにしてピッチングを見ていくと、ピッチャーの実力がより客観的に見えてくるようになる。来春は、ファンの皆さんがそうした着眼点を持ってファームを楽しんでもらえればありがたい。(つづく)