2年ぶりのセンバツに臨む球児や学校を「どっちも勝て~前哨戦 東西対決」として全3回で紹介。第2回は、東西初出場対決。ともに県立校の柴田(宮城)と大崎(長崎)は、昨秋地区大会で強豪私学を破り躍進。春夏通じ初の甲子園出場を決めた。

甲子園での快投を誓った柴田・谷木(撮影・佐藤究)
甲子園での快投を誓った柴田・谷木(撮影・佐藤究)

柴田の「守」の軸はエース谷木亮太(2年)だ。昨秋の東北大会は八戸学院光星(青森)など強豪私学を次々に破って準優勝。右腕が躍進を支えたが、ほぼ1人で投げた準決勝までに球数は481球。1週間内500球の球数制限により、決勝はベンチスタート。2番手で19球を投げ、1/3回3安打4失点でチームは大敗を喫した。しかし、県大会から全11試合に登板し7完投(2完封)で9勝をマーク。最速134キロ直球に多彩な変化球を織り交ぜるスタイルに手応えもつかんだ。「秋は大きな自信になった。甲子園でも背番号1をつけて、全国の強打者を抑えたい」と力を込める。

シート打撃で左前打を放つ柴田・村上(撮影・佐藤究)
シート打撃で左前打を放つ柴田・村上(撮影・佐藤究)

「打」の中心は1年夏からレギュラーで、高校通算26本塁打の村上太生輔外野手(2年)。県大会、東北大会ではチーム最多3本塁打で打線をけん引した。「持ち味はフルスイング。勝負強い打撃で勝利に貢献していきたい」と自覚十分だ。

平塚誠監督(48)は就任11年目で甲子園初出場を果たした。夏は13年県準優勝、18、19年は2年連続で県4強と、合言葉の「夢実現」に届きそうで届かなかった。「(甲子園出場まで)長かったです。これまでのOB、お世話になった方々からは『甲子園で1勝はしてくれよ』と言われているので、頑張りたい」。甲子園1勝へ-。新たなる夢実現に向かう。【佐藤究】

20年11月、秋季高校野球九州大会の準々決勝・延岡学園戦で、9回2失点の力投を見せた大崎・坂本
20年11月、秋季高校野球九州大会の準々決勝・延岡学園戦で、9回2失点の力投を見せた大崎・坂本

長崎県西部の人口約5000人の島、大島にある唯一の高校、大崎が甲子園で「離島旋風」を起こす。

全校生徒113人の県立校ながら昨秋、116季ぶりに出場した九州大会で明豊(大分)、福岡大大濠などを下して初優勝。島からは春夏通じて史上8校目の甲子園切符をつかんだ。最速139キロのエース右腕、坂本安司(2年)を軸とした堅守が武器。坂本は「甲子園では145キロが目標。勝って恩返ししたい」と誓う。期待を寄せる島民から魚の差し入れをもらうこともあり、支えに応えるつもりだ。

29人の全部員が近隣の佐世保市や五島列島など長崎県出身。中学時代の全国大会経験者は2人いるが、全国区のタレントはいない。チームの転機は18年4月。清峰のコーチ時代、そして佐世保実を率いて甲子園に出場した清水央彦(あきひこ)監督(49)が就任。部員5人の廃部危機からの改革が始まった。20キロの重さの丸太を抱えて坂道800メートルを駆け上がり、砂浜走や1周約300メートルのグラウンドのインターバル走などで心身とも鍛え抜いた。名将の指導を受けようと有望な選手も集まり、就任3年目で九州を制した。経験豊富な指揮官の下、まずは島からは06年春の八重山商工(沖縄・石垣島)以来3校目の初戦突破を狙う。【菊川光一】