2021年のプロ野球が開幕して、2週間がたった。ここまでの傾向を踏まえながら、記録面からみた今季の注目点を2回にわけて紹介する。

  ◇  ◇  ◇

今季は9回で同点なら引き分け、延長回は行わない、という特別ルールが設けられた。これによって、今年は引き分け試合が大きく増えることが予想される。昨年までとは違って延長回を考えない分、良いリリーバーを前倒しで登板できる。特に先発が不安なチームは、早い回から思い切った継投が可能に。投手陣が不安でも、小刻みな継投で失点を抑えられ、ロースコアになる展開が増えそう。今季は「勝てなくても、引き分けでOK」という考えも必要になるかもしれない。

2リーグ制後、引き分けの多かったシーズン上位
2リーグ制後、引き分けの多かったシーズン上位

過去に引き分けの多さが優勝の行方を左右したシーズンがある。82年のセ・リーグを制した中日は、この年64勝47敗19分け。19引き分けは、今もシーズン最多記録だ。

しかも勝利数は2位巨人66勝、3位阪神65勝より少なく、リーグ3位の勝利数で勝率1位だったのは、この年の中日だけ。引き分けが増えると予想される今季は、このようなケースで優勝が決まる可能性もありそうだ。

82年のセ・リーグ勝敗表
82年のセ・リーグ勝敗表

引き分け試合が増える一方、サヨナラで決まる試合は減りそうだ。延長10回までだった昨季はサヨナラ試合が35試合で、前年19年の77試合から半減。全体の試合数が少なかったからとはいえ、割合で見ても4・9%と、過去30年で最も少なかった。しかも今季はサヨナラになるのが9回裏の1イニングだけで、その上、高い確率で相手のクローザーが出てくる状況となる。得点を挙げるのはより難しくなり、昨季よりもさらに数字が減る可能性は高い。

サヨナラ試合の少なかったシーズン(2リーグ制後)
サヨナラ試合の少なかったシーズン(2リーグ制後)

今季の開幕戦では巨人亀井がサヨナラ弾、翌日からソフトバンクが2試合連続でサヨナラ勝ちと劇的なシーンが続いたが、今年のルールを考えると非常に珍しいケースだったかもしれない。今季のサヨナラ試合は例年以上に、希少価値の高い試合といえそうだ。【多田周平】