アマチュア野球の現場はコロナ禍で変化を余儀なくされた。予期せぬ事態が、逆に進化を招いたともいえる。顕著に表れている1つのツールはSNSだ。ホームページやブログ、フェイスブック、ツイッター、インスタグラムなどを通じ、保護者や卒業生、ファンに直接、情報を届けている。

大学野球界で最も注目されている6大学野球連盟のツイッターのフォロワーは1・8万人超。野球部独自のアカウントを開設している高校も多い。立花学園(神奈川)でも、SNSに力を入れている。トラッキングシステム「ラプソード」導入とほぼ同時期の19年1月から、ツイッター(@wakuwakugakuen)を開設した。

指導者が必ず校正を行うなど気を配りながら、マネジャー陣が中心となって投稿を続けている。17年4月に就任した志賀正啓監督(34)は、山に囲まれたグラウンドの環境でどうしたら大勢の人に見てもらえるかを考えた。「ツイッターなどを使うと、こちらから全世界に発信することができる。選手にしてみると、見られているという感覚が得られる。ネットリテラシーを含めて、学びになることも多い」。練習メニューや雰囲気を動画で投稿する。

立花学園野球部のモットー「ワクワクしてる??」がデザインされた横断幕の前に立つマネジャーの右から藤平さんと小島さん(撮影・保坂恭子)
立花学園野球部のモットー「ワクワクしてる??」がデザインされた横断幕の前に立つマネジャーの右から藤平さんと小島さん(撮影・保坂恭子)

当初の狙いとは違った形で効果も生まれた。マネジャーを務める藤平純海さん(2年)と小島みどりさん(1年)が高校選びの手段として使ったのが、ツイッターやブログだった。小島さんは中3の時、コロナの影響を大きく受けた。高校のキャンパスや部活見学が、すべてなくなった。進学先を選ぶ際、ふと見ていたツイッターのタイムラインに「立花学園野球部」の文字が流れてきた。野球部のマネジャー志望。「部活を見たり、体験することもできなかったけど、いい雰囲気だなと思った。自分もここでマネジャーをしたいと思って、入学しました」。

マネジャーの大事な仕事の1つに、ブログの更新がある。「ドキドキマネのワクワクblog」。週3日のペースで投稿し、さらに週2日はラジオ形式で音声も配信。選手のインタビューや学校の季節ごとのイベントを紹介するなど、工夫を凝らす。藤平さんは「知らない人には興味を持ってもらいたいし、知っている人には応援してもらえるように意識しています」という。特にブログでは文章力が大事。書いては消しを繰り返し、言葉遣いにも気を使うことで徐々に苦手意識もなくなった。小島さんは「私が中学生だった時に知りたかったことを、マネジャー志望の中学生にも届けたい」と取り組んでいる。

選手だけでなくマネジャーも積極的に動くチーム。甲子園出場はもちろん目標だが、志賀監督が目指すのは「全員が輝ける」野球部だ。「今すぐではなくてもいいので、いつか『立花学園で野球をやってよかった』と思ってほしい」と願っている。【保坂恭子】(つづく)