エンゼルス大谷翔平投手(27)が、投打ともに自己ベストの結果でメジャー4年目を終えた。二刀流として完走した歴史的なシーズンを、担当記者が5回連載で振り返る2回目。

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投打の二刀流としての才能は既にメジャーでも認められていた。しかし、過去3年間は故障を繰り返し、そのたびに打者専念となった。投手でどれだけ投げられるのか-。二刀流で継続可能かどうかの争点は、そこにあった。そして4年目、23試合の登板で9勝2敗、防御率3・18。投球イニング130回1/3で156奪三振の結果を残した。

右手中指のマメや右肘への死球などマイナーアクシデントで登板間隔が空くことはあったが、メジャーで初めて先発ローテーションで安定して投げきった。手術した右肘のなじみや投球フォームの安定に加え、カットボールも大きな要因の1つだった。元々の球種は直球、スプリット、スライダー、カーブの4種。開幕前の春キャンプで習得した新球種は投球の幅を広げ、球数減にも効果的だった。

5月19日のインディアンス戦。直球の平均球速が91・3マイル(約147キロ)で、前回登板から約8キロ減速した。「真っすぐはいかないという感じ。その代わりカットが良かったので、多めに投げた」。配球の割合は直球40%に対し、カットボールが32%を占めた。直球が走らなければ、カットボールで芯を外して打たせて取る。最速160キロ前後の直球と魔球スプリットで三振の山を築くスタイルに加え、新たな投球法となった。

できるだけ長いイニングを投げるために、球数を抑える意図もあった。直球狙いの打者に対し「1球で終わればこちらも楽ですし、そういう意味での球種でもあります」。7月19日、後半戦の最初の登板でもカットボールやスライダーでアスレチックス打線を6回3安打1失点に抑えた。「うまく球数調整ができてると思うので、有効に使えている」と手応えもあった。

一方で、必殺球にも磨きがかかった。シーズン序盤、スプリットは右打者の内角にはシュートし、外角にはスライドしながら落ちた。縦だけでなく横の変化も加わり、「『そういうふうに曲がってくれたらいいな』っていうぐらいの感じで投げたりはします」。シーズン序盤は抑えめに使いながら、最終盤で一気に解禁した。22試合目の登板となった9月19日のアスレチックス戦。108球のうち約51%の55球を投じ、10三振を奪った。

迫力ある投球だけでなく、状況に応じた“使い分け”で投手大谷は進化した。体の状態が維持できたことが最も大きかったが、投球の引き出しを増やしたことも、二刀流で完走の一因となった。【斎藤庸裕】(つづく)