2年生の強打者がそろった大会で広陵・真鍋慧(けいた)内野手に注目していたが、おやっと感じたバッターがいた。20日の敦賀気比戦、同じ広陵の左打者、内海優太外野手(3年)の内角打ちが特徴的だった。

20日、敦賀気比戦で先制適時三塁打を放つ内海
20日、敦賀気比戦で先制適時三塁打を放つ内海

真鍋に注意を払っていたのだが、内海の打席を眺めていて、どこか気になるなと感じていた。誰のフォームに近いかなと考えているうちに分かったのだが、日本ハム稲葉篤紀(現GM)の打ち方に似ている。内角のボールに対しバットのヘッドが立っている。厳密にいえば立っているように見えた。私の経験上、ヘッドを立てるように内角球に対応できるバッターは珍しい。

打撃フォームのメカニックとして、内角球にしっかり対応できれば、バットのヘッドがどうなっていても関係ないが、捕手の目線からすると、ヘッドが立っているようなスイングで、内角球をフェアゾーンに打ち返されると、内角に強いなという印象が強くなる。捕手によって感じ方はさまざまだが、私は内角では攻めづらくなると感じた。

稲葉と対戦したことはないが、コーチ時代に見ていた場面から、内角に強いというイメージが残る。この試合で内海は3安打しているが、いずれも内角の厳しいボールをしっかり捉えていた。これは打者としてはかなりの強みになる。内海の進路がどうなるか分からないが、野球を続けていくのなら、このバッティングはさらに進化するだろう。

プロでも内角を得意にするバッターは勝負強い。先述した稲葉以外でも、ソフトバンク松中信彦、現役選手なら巨人坂本勇人などがその代表的なバッターになる。多くのバッターが内角への対応に苦労する中で、内角球を苦にしない、むしろ得意にするバッターの優位性はかなり大きくなる。

注目していた真鍋も素晴らしいスイングで3安打を放った。スケールも大きく、いかにも大器を思わせる有望なバッターという印象だ。真鍋への意識が高かったことで、内海に対してはフラットな視線で見ていた。先入観なくフォームを見たから気付いた部分だったかもしれない。

20日、敦賀気比戦で三塁打を放つ広陵・内海
20日、敦賀気比戦で三塁打を放つ広陵・内海

内海は、24日の2回戦・九州国際大付の左腕香西の外角へ逃げる変化球に対応できなかった。28日の準々決勝で、その香西と対戦した浦和学院の左打者金田は、外の変化球を左翼へ運んでいた。金田のスイングには外のボールは左翼方向へという意識が感じられた。

内海もこういう準備をして左腕の外角へ逃げる変化球に対応できるようになれば、さらに良くなるだろう。右投手の内角球への対応ができるのだから、次の段階は左腕の外角への変化球への対応。段階を踏んでレベルアップできるバッターに映った。(日刊スポーツ評論家)