「ドリームジョブ」。米国では、スポーツビジネスに関わる仕事が、そう呼ばれているという。野球を通じて、スポーツを通じて、夢や感動を届ける。その舞台は、選手やチームだけでなく、さまざまな人や団体が関わって成り立っている。

規模が桁違いに大きい米国では、自然とそう呼ばれるようになったのかもしれない。日本のプロ野球でも、多くの人が関わることで日々の試合が行われ発信されている。

パ・リーグでは、その加盟6球団の出資により07年に設立された「パシフィックリーグマーケティング(PLM)」が、パ・リーグTVの運営や6球団で足並みをそろえた事業などを展開。角度を変えながら、情報や話題を発信し続けている。25年までにパ・リーグファンを2000万人にする計画だ。

では、そのPLMが思い描く未来とは何なのか。森亜紀子広報部長は「スポーツ業界の総合商社になることです。野球での知見は、他のスポーツでももちろん他のエンターテインメントでも生かせると思うんです。他の業種も含め、転換できる意味を込めてスポーツ業界の総合商社は、1つ目指すところと思っています」と野球の垣根を跳び越えた将来を見据える。

当然、軸は6球団の事業展開。パ・リーグTVは規模を拡大し、他業種とのコラボでマーケットを広げるなど、近年の発信力は突き抜けている。一方で、その枠にとらわれない人材育成にも力を入れる。「選手はNPBからMLBへいって活躍されている。いずれはスポーツビジネスに携わる、例えば球団職員の方だったりが、MLBへいく未来があってもいいと思うんです。スポーツ業界を裏側で支える人間も、いつか『子どもがなりたい職業ランキング』に入れたいと言っています」と話す。

同ランキングで「スポーツ選手」は、いつの時代も上位に入っている。ただ「スポーツ関係」というジャンルはない。近年は時代を表すように「ユーチューバー」がランクイン。ドリームジョブを日本に定着するためにも、支える側の人材が、表に出ていくことにも積極的だ。その一環としてPLMでは、選手名鑑ならぬ従業員名鑑を公式ホームページで“背番号”も一緒に掲載している。

顔が見え、どんなキャリアを経て、どんな思いで働いているのかがわかると同時に、自然と親近感も湧く。「ドリームジョブと呼ばれるということは、それだけ世間的な認知もあるということ。スポーツに関わる仕事の価値を、選手に近しい位置にまで引き上げ『スポーツに関わりたい』と思う人の裾野を広げていきたいと考えています。ぜひなりたい職業にしたい。トップはもちろん選手ですが、トップ10には入りたいということで9位を目指そうといっています」。個性豊かな6球団を中心に描く、PLMの壮大な未来予想図。まさに夢の仕事だ。【栗田成芳】

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