田村藤夫氏(63=日刊スポーツ評論家)が巨人ドラフト1位の高松商・浅野翔吾外野手(18)のルーキーイヤーに向けて「浅野のRoad to 巨人の星」として連載する。最終回は走塁編。

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強打で強肩俊足。浅野は望ましい身体能力を備えている。中でも俊足というのは武器になる。ゆえに、プロの世界では走塁は緻密な部分での勝負になる。高校からいきなり最高峰のプロ野球に順応するのは並大抵ではない。心しておくべき注意点を指摘しておく。

非常に細かい部分になる。甲子園での九州国際大付戦だった。左腕香西に対し一塁走者の浅野に課題となる動きがあった。香西のうまいけん制を受けた後、セットポジションの香西はじっくりボールを持ち、目で浅野の動きを制した後、投球に入った。しかし、浅野はけん制が来ると感じて帰塁している。

8月、夏の甲子園の九州国際大付戦に出場する高松商・浅野
8月、夏の甲子園の九州国際大付戦に出場する高松商・浅野

打者がその投球を振らなかったために、何も起こらなかったが、これは記録に残らないミスといえる。正確に投球だと見極めていれば、リードを広く取り、ヒットならば三塁まで進めていたかもしれない。ヒットが出たとしても、一塁ベースからスタートした場合と比べると大きな差になる。二塁で止まるか、三塁まで行けるか。こうした部分はプロ野球では勝敗を分けることだって往々にしてある。

けん制を見極め、次の動作をしっかり考えて準備しないと、プロでは致命的なミスになりかねない。同様に、佐久長聖戦で二塁走者の浅野は、打者の遊ゴロで三塁に走りアウトになっている。確実に打球判断をすべき場面で、暴走に近い形でアウトになった。これも、プロであればボーンヘッドとして指摘される走塁ミスだった。

プロでは常に先の塁を奪う意識の徹底が要求される。右翼、中堅、左翼という方向の違いはあっても、一塁から三塁を奪えるかどうかは、少しでも広くリードをすること、もしくは打球反応のわずかな差による。

田村藤夫氏
田村藤夫氏

高校野球では打力で抜きんでた実力を誇っていた浅野だが、走塁にはそこまで緻密に取り組んでいたかどうか。現状では多くを望むことは控えるが、走塁センスがあれば俊足だけに盗塁への可能性も広がる。

まず自分の最大の魅力であるバッティングでアピールすることで、プロのレベルの高さにも順応していけるようになるだろう。その先に守備力、走塁力でも可能性を示してもらいたい。(この項おわり)