今年のプロ野球ドラフト会議では、育成も含め126人が指名された。夢の舞台へ羽ばたいていく選手たちがいる一方で、指名されなかった選手やプロ志望届を出さなかった選手もいる。彼らの思いを探る。

4年後のプロへの思いを語った山梨学院・榎谷(撮影・星夏穂)
4年後のプロへの思いを語った山梨学院・榎谷(撮影・星夏穂)

 

4年後、祖父も父も見たことのない景色を見るために、再出発する。山梨学院・榎谷礼央(れお)投手は今春と今夏、エースとしてチームをけん引し、2季連続で甲子園に出場した。祖父・詔彦さん、父・優史さんも浜松商で甲子園に出場経験があり、家族3世代での出場を達成。最速144キロ右腕は3年間共に支え合ってきた山本和輝捕手とプロ志望届を出した。

10月20日のドラフト会議当日。寮の食堂で携帯の画面を見つめ、山本とそのほかの野球部の仲間と行方を見守った。2人の名前は最後まで呼ばれることはなかった。しかし落ち込むことはなく「大学で頑張ろう」とすぐに切り替えられた。仲間たちからの「4年後待っている」と期待の言葉を胸に前を向いた。

プロの道へ進むことを心に決めたのは昨秋の関東大会、浦和学院との準決勝。延長10回を1人で投げ抜き、わずか2失点と全国クラスの浦学打線を封じチームを勝利に導いた。注目されていた宮城誇南投手(18)、ロッテにドラフト5位指名された金田優太内野手(17)に投げ勝ったことが自信につながった。

幼少期から甲子園は身近なものだった。小学2年で野球を始めた。その頃から春休みと夏休みは甲子園とユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に行くのが家族旅行のお決まりコースになっていた。浜松商時代に選抜に出場した父が甲子園球場の話を何度も聞かせてくれた。「土がふかふかだぞ」。「打者からはピッチャーが近くみえるぞ」。いつしか甲子園は「行きたい場所」ではなく「行く場所」へと考えが変わっていた。

実際に経験したあとは「今度は自分が伝える番」と中学1年で野球をしている弟の太寿さんに聖地の素晴らしさを教え込んでいる。「兄弟で甲子園にいけたらいいなと。将来的には4世代も目指したい」。

次のステージは大学野球になる。父は浜松商から立正大に進学し、東都1部でプレーした。入れ替え戦の経験もあり「見ておいた方がいい」というすすめで神宮球場に足を運び「大学野球の本気」を肌で感じた。ロッテ・ドラフト1位の専大・菊地吏玖投手(22)、DeNA同3位の駒大・林琢真内野手(22)などプロへ行く選手たちを生で見て、高校野球とのレベルの違いを目の当たりにした。

今の目標は、追い続けてきた父を超えることだ。「父は選抜に出場した際、3試合した。自分は春夏出ることが出来たけど、1試合ずつしかしていないから、まだ超えられていない。今は一からリスタートして、プロになることで完全に超えられる」。ここまで導いてくれた父にプロ入りという形で恩返しする。【星夏穂】