第95回選抜高校野球が開幕した。これまでのセンバツでは、幾多の名勝負があった。節目の95回大会の頂点を高校生とともに目指す指揮官に、それぞれの「マイベストセンバツ」を聞いた。第1回は山梨学院・吉田洸二監督(53)。

笑顔をみせる山梨学院・吉田監督(撮影・前岡正明)
笑顔をみせる山梨学院・吉田監督(撮影・前岡正明)

初勝利を手にしたような笑顔だった。開幕試合で自身の甲子園春夏通算16勝目を手にすると「本当にうれしかった。53歳のおやじがこんなにうれしいんだと思った」とほおを緩めた。3季連続の甲子園。センバツ出場が決まり、昨春と昨夏の試合を見返した。「自分が最悪の表情をしていた。なんとか勝ちたいっていう思いばっかりで選手がのびのびやれる表情じゃなかった」。この試合では選手に生き生きとプレーしてもらえるムードをつくった。

あのころと同じだった。過去監督として14度立った甲子園で、思い返すのは清峰(長崎)時代、06年に準決勝でPL学園を破った試合だった。初出場でエース左腕・有迫亮投手(当時3年)がPL学園打線を2安打完封。前田健太(ツインズ)から4点を奪って6-0で勝利した。「野球を知らない田舎の若い先生が生徒と一緒にホームルームの延長のような感じで試合をしていた」と振り返る。

当時の目標は「ヒット1本以上、10点以内に抑える」。情報と社会の教員も兼任し「次打ったら平常点上げてやるから」とジョークを交えたやりとりもした。“監督と選手”ではなく“先生と生徒”として初の大舞台を存分に楽しんだ。結果、初出場で準優勝。3年後のセンバツでは県勢初の全国制覇を成し遂げた。

交流試合を除いて、甲子園での直近3大会は1点差で初戦敗退。「清峰で決勝戦に立った時の次くらいに、今日は本当に甲子園の神様勝たせてくださいと思って入りました」と明かした。試合中は手をたたいてチームを鼓舞し、笑顔で選手の背中をポンポンとたたいて甲子園を一緒に楽しんだ。次戦も初心を思い返して戦っていく。【星夏穂】