5月下旬のある日、高校野球ファンのNさんから「幻の夏…」というタイトルのメールが届いた。

Nさんからは8年前から地方大会開幕前の6月に夏の甲子園優勝校を予想するメールをいただいている。ただ、コロナで甲子園大会が中止となった今年はさすがに来ないだろうと思っていた。しかし、今年もNさんからメールが来た。ご本人からも「お願いします」という言葉をいただいたので紹介したい。

以下、全文。

永遠に開催されることのない、2020年夏の甲子園。幻の全国制覇は、ズバリ仙台育英を推したい。入江大樹、宮本拓実ら3年生の野手陣の甲子園経験は十分な上に、向坂優太郎(左腕)菅原天斗(右腕)の3年生投手だけでなく、2年生も笹倉世凪(左腕)伊藤樹(右腕)と、両学年に経験豊富な投手を擁しており、投打とも非常にバランスがいいチームになっている。

対抗馬は、中京大中京と大阪桐蔭。

秋の神宮大会を制し、センバツの優勝候補だった中京大中京は、3年生の戦力だけを見れば仙台育英を上回る。高橋宏斗と松島元希の左右ダブルエースは安定感抜群な上に、1番センター西村友哉、2番セカンド中嶌優、3番ショート中山礼都、4番キャッチャー印出太一と続く打線は切れ目がない。特に中山は、第1ストライクを見逃さず強振できる、見ていてワクワクする選手だ。

今年の大阪桐蔭に、2012年の藤浪、森、2018年の藤原、根尾クラスの大物はいないが、ベンチ入り全員の素材は仙台育英を上回る。仙台育英に負けているのは甲子園経験だけだ。投手陣はエース藤江星河(左腕)に加え、昨秋の府大会、近畿大会で経験を積んだ2年生トリオの松浦慶斗(左腕)関戸康介(右腕)竹中勇登(右腕)。打線も西野力矢三塁手、船曵烈士外野手、加藤巧也二塁手、吉安遼哉捕手、伊東光亮遊撃手らを中心に、控え野手を起用してもチーム力が落ちない、底力を秘めたチームだ。甲子園に出ていれば、試合を重ねるごとに本命度を増していく、西谷浩一監督はそんな戦い方を見せただろう。

そのほか、県岐阜商、履正社、東海大相模、天理、智弁和歌山、星稜など、大舞台での上位進出が見込まれた強豪校。どのチームにもドラフト候補生が目白押しだ。これらのチームが対戦した場合を空想するだけでも楽しいのに、それが実際見れていれば…。ただただ残念でならない。

我々、「人生イコール野球」人間にとって、2020年夏の甲子園大会を見る機会は永遠に失われた。しかし高校野球は、必ず復活する。日本中の野球ファンが、歓喜の涙を流す日は、甲子園に大歓声が戻る日は、必ず来る。その日を信じ、今を耐えたい。(以上)

ちなみにNさんの予想だが、2013年から昨年までで外れたのは13年の前橋育英と19年の履正社の2校。予想の方法は、地方大会前に10校程度を候補に挙げ、この中から優勝チームが出れば的中となる。

Nさんは今年の本命に仙台育英を挙げてきた。東北勢の甲子園制覇は春も夏もまだない。もし開催されていたら…。深紅の大優勝旗が初めて東北の地にもたらされていたかもしれない。

そして日本高野連は10日、8月10日から甲子園球場でセンバツに出場予定だった32校を招待して「2020年甲子園高校野球交流試合」を開催すると発表した。交流試合には仙台育英や中京大中京、大阪桐蔭も出場する。1試合のみの甲子園となるが、Nさんが候補に挙げたチーム同士が対戦する可能性もある。また全国47都道府県では独自大会の準備が進められている。間もなく夏。最大のイベントは中止になったが、高校球児が前を向き再び一歩を踏み出しつつある。