高校野球が大好きな仲間と、もう何年も続けている遊びがある。

「日本全国の強豪校に行って、正門前で写真を撮る」。

旅行先で探したり、ドライブがてら関東を中心に日帰りで行ける場所へ向かったり。高校野球に興味のない友人からは「何が楽しいの? 」と聞かれることもあったが、説明のしようがない楽しさがあるのだ。

2019年、仕事で行けなかった私を除いた仲間が向かったのは、当時夏の福島県大会13連覇中の聖光学院だった。

「おはようございます!」。早朝6時30分、最寄り駅の伊達駅に到着して学校の場所を調べていると、自転車に乗って背後からやって来た学生に、大きな声であいさつをされたという。見ると、聖光学院野球部の大きなカバンを背負っていた。そして、道を歩く人全員に大きな声であいさつをしながら自転車をこいで行った。

日本全国、100校近く強豪校に行ってきた。だが、学校から離れた場所で、学校関係者の目が届いていないにも関わらず、あたかもそれを当たり前のように行う選手の事を聞いたのは、初めてだった。

「これは13連覇するわ」と仲間は思ったという。

私が「高校球児の1日」の企画書を会社に提出した際に「どこを撮ってみたいの?」と上長から聞かれた。もちろん希望は山ほどある。けれど、仲間の話がずっと心に残っていた。「福島の聖光学院です」と答えた。「連覇し続けるチームを撮りたい」というよりも、15~18歳でそれだけの人間力を身につける球児に会ってみたかった。

聖光学院を撮影して納得した。全身が泥だらけになりながら、鬼気迫る勢いで練習に励む球児たち。いったんグラウンドから外に出ると、まるで自分の家族かのように接してくれるのだ。

練習が終わり、グラウンドから寮に移動するため車に撮影機材を積み込んでいると、自転車で寮に向かう選手が遠くから叫んでくる。「青山さーん!! 運転気をつけて下さいねー!!」。特定の選手を撮影していると、背後から次々に「どうですか!? しっかり撮れてますか!?」と大声で話しかけてくれる。「撮れてたけどみんなの声が入っちゃったから撮り直しだよー!」と笑えば、「すみません!!」とニコニコ顔で謝ってくる。

「青山さん見て下さいこの写真。僕、今日誕生日だったんですけど、お風呂出て部屋戻ったら僕の机一面にみんなから大量におかしのプレゼントが置かれていました」と報告がきたり、撮影終了が近づくと「青山さん、僕の名前なんて覚えてないですよね? 」と聞いてくる。言い当てると、うれしそうな笑顔を返してくれた。

全ての撮影を終えた後、斎藤智也監督が言った。「これから日本中の高校球児と出会うと思うけど、多分あいつらが日本で一番かわいいよ」。

7月20日の福島大会準々決勝で、惜しくも光南に敗れて戦後最長の夏甲子園連続出場記録が「13」で途切れた。だが、野球も学校生活も、仲間への思いやりや他者への気配りも「王者」にふさわしいチームだった。

【撮影・編集 青山麻美】