プロ野球の未来像を日本野球機構(NPB)斉藤惇コミッショナー(79)に聞いた。野村証券副社長、日本取引所グループCEOという経歴を持つビジネスマンは、どんな絵を描いているのか。ビジネス界出身の斉藤惇コミッショナーが描く球界の未来図。2回目は世界との関わりについて。

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トップ選手が次々に大リーグに挑戦する流れが続いている。昨季は日本ハム大谷が6年目、23歳で渡米した。

斉藤 米国に行ったら面白いと選手が思うのではなく、日本の野球をもっと面白くする。大谷さんがアメリカに行く時、栗山監督がどうしてもかと聞くと「野球選手になったらアメリカに行きたい」と言ったと。本音だと思う。どの選手も1回はメジャーでと。それを僕はどうこう言うつもりはない。アジアの人が野球をここでやりたいと思わせるようにしたい。

今季は台湾のスター王柏融が来日した。アジアは韓国、台湾にプロが存在し、巨大市場の中国がある。

斉藤 ここは一番面白くて可能性がある。各オーナーがあまり反対しないところでしょう。日本で球団を増やす考えもあるが、アジアのチャンピオンシップを争う。ナショナルスティックなものは、バドミントンだろうが卓球だろうが、日の丸とか中国の旗がなびきだすと、わーっとくる。中国が本当に強い野球チームをつくると、あれだけ人がいるんだし面白いかも。1回北京では(オリンピックを)やったし、台湾、韓国は非常に強い。オーストラリアはいつも入りたいと言っている。

12球団以外にフランチャイズを台北、上海、北京などに設置する可能性はあるのか。各リーグ勝者からアジア王者決定戦の枠組みが先か。

斉藤 (フランチャイズ設置は)少し…実現しそうにない夢に近いけど(笑い)。同じアジア人で、1つのスポーツで争うのは面白い。日本シリーズの次に、アジアシリーズがあって、ソウルや台北、上海でやったり。それなら観客数の心配はいらないと思う。

地方への分散は、球界再編問題から生まれた成果だ。オリックス宮内オーナーは、50万人規模の都市にマイナーとして2軍を置くことを提案する。

斉藤 強いチームが不思議と地方ですよね。福岡、広島、仙台、北海道。サッカーは各県に1つある。人間は、評論家が言うほどコスモポリタン的(世界主義者)じゃない。高校野球でも全国からプレーヤーが集まっているけど、やっぱりおらが町の、となっている。まだ正式に討議してないけど、マイナーを地方にというのは、1つの考えかもしれない。

プロ野球は巨人戦の放送権に依存した体質から脱却した。今後は人口動態を見据えた上で「アジアへの展開」と「地域密着」を同時並行で考える時代だ。(敬称略=つづく)【斎藤直樹】