2018年夏の甲子園は100回大会を迎える。毎夏のドラマが100回をつなぐバトンとなった。PL学園の桑田(現スポーツ報知評論家)清原和博のKKコンビのあとにも、星稜・松井秀喜、横浜・松坂大輔らヒーローが生まれた。100回の偉業の裏で、球界は野球人口の減少や無関心層の拡大という難題を抱える。桑田に高校野球への提言を聞いた。

 桑田 大学野球の選手人口は増えているし、日本代表が再び世界一を奪還するためにも、野球界は1つになって考える時期に来ている。そのためには、金の卵が高校野球で心身ともに燃え尽きる仕組みは変えないといけない。たとえば投手に球数制限を設ける。投手交代が頻繁になったら甲子園の魅力がなくなるという人がいるが、絶対になくならない。あの過酷な状況下で、高校生が白球に思いを込めてプレーする姿勢は、世代を超えて感動する。日本学生野球憲章にも「部員の健康を維持・増進させる施策を奨励・支援し、スポーツ障害予防への取り組みを推進する」と書かれている。それを実践するのは大人の役目だ。

 週1度は練習休日を作り、心身のゆとりを持たせる。野球は大事だが、勉強も恋愛も、栄養も睡眠も、高校生には大事だと気づいてほしい。

 桑田 1日中練習させてはいけない。勉強の楽しさに気づいてほしいし、何より恋愛を勧めたい。僕は中学も高校も3年間彼女がいました。当時思っていたのは、彼女のためにも、オレはエースになって甲子園で優勝したいという気持ち。だから遊んでばかりいられないんです。それに彼女の表情を見ていると、対戦する打者の観察力も身についた。打席の立つ位置を変えたとか、バットを短く持ったなとか。観察に基づいて配球を組み立てたら、打者を簡単に打ち取れるようになった。恋愛は野球に生きると気づかされました。

 夏の甲子園運営にも桑田ならではの意見がある。

 桑田 たとえば8月は1カ月甲子園を借り切り、女子の甲子園も開催する。1週間おきに男子、女子、男子。4週目に女子、男子の準決勝と決勝を交互に行う。試合間隔が取れるので、投手の連投も未然に防げる。

 女子野球は、新たな野球人口につながるとみる。

 桑田 彼女たちが野球を好きでいてくれたら、子どもにも野球の素晴らしさを伝えるでしょう。たとえお父さんに時間がなくても、お母さんとキャッチボールができます。女性の指導者もいるべきです。そのためにも、合理的でわかりやすい指導プログラムと指導者のライセンス制度が必要。もちろん2、3年に1度研修をやって指導力の維持を図る。

 大胆な提言も、一生野球と寄り添う覚悟からだ。

 桑田 僕は今でも野球が大好きで、素晴らしいスポーツだと思っています。そんな野球が、今のままでは20年後にマイナースポーツに転落するのではないかという危機感を抱いています。日本の野球界をよりよくするため、僕は野球の歴史とスポーツ医科学の両面を勉強しながら提言をしていきたい。

 次代の日本野球界のあり方や仕組みを考え続ける。岐路に立つ球界を救う存在も、ヒーローと呼ばれる。(敬称略=おわり)

【堀まどか】

(2017年6月13日付本紙掲載 年齢、肩書きなどは掲載時)