野球評論家の西本聖氏がプロ野球の春季キャンプが行われている宮崎を訪問。巨人、ソフトバンク、西武、オリックスを取材した。

 -まず最初に訪問したのが古巣巨人。4日朝、空港から球場に直行した

 西本氏 グラウンドに入って驚いた。思わず「何でこんなに静かなの?」と同行した記者の人たちに聞いてしまった。ウオーミングアップの最中だったけれど、あまりに活気がない異様な光景。スタンドのファンの人たちの話し声の方が大きいくらい。アップが終わってキャッチボールが始まったが、「さあ、行こうぜ!」という掛け声もないし、終わる時も静かでいつ終わったのかも分からないほどだった。

 -その後に始まった投内連係の練習は?

 西本氏 淡々とこなしているだけのように見えた。練習のための練習。ミスが出てもコーチがその場で注意するわけでもない。勝つための練習というものには見えなかった。シートノックが始まっても野手が全力でスローイングしない。軽~く6、7割の力で投げているだけ。「どうしたの?」と思ってしまうほどだった。ブルペンも活気がなかった。高めのボールが行ってもコーチが注意もしない。

 -巨人は大丈夫なのか

 西本氏 心配になった。巨人という優勝を求められているチームにあって「勝つんだ!」という気持ちが感じられない。こういう空気で一日が終わっていいのか。ファンの人たちも「何か変だし、練習を見ていてもつまらない」と嘆いていた。プロ野球選手というのは「姿」でファンを感動させなければいけないと思っている。いかに自分のプレーでファンを熱くさせるか、感動させるか。見ているだけで熱くなる、そんなギラギラした「姿」を見せないといけない。

 -巨人は一昨年、昨年と2年続けて優勝を逃した。今季はFA選手を3人獲得するなど大補強も行った

 西本氏 補強はしたけど雰囲気やムードというのはお金で買えるものじゃない。勝つための環境、雰囲気作りをしないといけない。それをするのは監督やコーチ。高橋監督にも「この静かな雰囲気は良くないんじゃないか」と率直にぶつけてみたが、否定はしなかった。やはり監督自身にも危機感のようなものはあるのかなと感じた。あと気になったのはアップの最中にファンをグラウンドに入れていたこと。果たしてこれがファンサービスと言えるのか? 選手はそれを望んでいるとは思えない。選手を間近で見てもらいたいという気持ちは分かるが、選手が声を出せない一つの原因になっていると感じた。選手は一日のスタートということで集中する大事な時間でもある。ファンサービスは練習が終わってからでもできるのではないか。

 -その他のチームで気になったことは

 西本氏 西武のバッターたちの振りが凄いと感じた。ベテランも若手も思いきりバットを振っている。迫力が違う。スイングの強さに思わず引き込まれた。オリックスでは金子。いつも以上に積極的に練習に参加していた。エースの自覚を感じた。チームに良い風を吹かせてほしいなと感じた。ソフトバンクは目的意識を感じさせる活気あるブルペンだった。