試合前から降り続いた雨が、巨人先発サンチェスの“強敵”になった。最初に「おやっ」と感じたのは初回、先頭打者の近本に対しての攻め。外角低めのストレートを3球続け、見逃し三振。一見、文句なしの最高の結果のように思えるが、投手としての本能は、嫌な予感を感じさせた。
試合の途中に振り出した雨であれば仕方がない。しかし、最初からコンディションが悪いのは分かっている。「今日は粘り強くなげなければいけない」というのが投手の心理。しかも昨年のサンチェスと近本の対戦は6打数2安打で、ヒットはいずれもホームラン。近本の調子が悪いとはいえ、最大の注意を払わなければいけない打者だった。その近本に対しコースも同じ真っすぐを3球続けて投げる姿に「勝負を焦っている」という印象を受けた。
予想通り、雨が強くなった2回にはストライクとボールがはっきりして連打。さらに暴投もあって、梅野に先制タイムリーを浴びた。無死一、三塁、木浪の2球目に足を滑らせて2ボールになると、マウンドの整備を要求。ここで打者の狙いを推測してほしい。整備直後のマウンドで、絶対にストライクがほしい場面。外野フライでもいいだけに、高めの直球は見逃すはずがない。高めに浮いた151キロの真っすぐは、もう少しでホームランになるというセンターへの犠牲フライになった。
3回も立ち直る気配がなく、1死も取れずに降板。リリーフした大江もタイムリーを浴びて3回までで6失点。こうなれば阪神の先発西勇輝は楽なピッチングができる。ただでさえ西勇は力んで投げる真っすぐを極端に少なくし、力を抜いて投げられる変化球中心のピッチング。“重馬場巧者”の投球で、7回を2ランだけの2失点で勝ち投手になった。
これだけぬかるんだマウンドでサンチェスを責めるのは酷だが、相手の西勇も同じ条件。粘り強くいかなければいけない状況で、それができなかったサンチェスと見事に実践した西勇との差がそのまま勝敗を分けた。今季は優勝を争う両チームの初対戦だが、勝負はあっさりと決まった。(日刊スポーツ評論家)