元ロッテの里崎智也氏(野球評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載中。39回目は「WBC後遺症が不調の要因となるか」です。

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 WBCで侍ジャパンの先発ローテとして活躍した石川が勝ち星なしの0勝3敗となり、先日2軍再調整となった。本人がWBC疲れをコメントした記憶はないのだが、同大会が開催された開幕まもないこの時期には、「WBC後遺症」を指摘する声もたまに聞こえてくる。

 しかし本当にそうなのか。23日現在、侍ジャパンのメンバーの成績を調べてみた。

<WBC日本代表メンバー成績(4月23日現在)>

【投手】

増井浩俊(日本ハム)4試合勝敗なし、1H2S、防2・25

宮西尚生(日本ハム)6試合0勝1敗、4H、防6・75

菅野智之(巨人)3試合2勝0敗、防2・49

秋吉亮(ヤクルト)7試合2勝0敗、1H2S、防0・00

牧田和久(西武)7試合勝敗なし、4H、防0・00

則本昂大(楽天)3試合1勝1敗、防4・74

松井裕樹(楽天)13試合2勝0敗、2H8S、防0・00

千賀滉大(ソフトバンク)3試合2勝1敗、防3・60

石川歩(ロッテ)3試合0勝3敗、防7・62※2軍再調整

藤浪晋太郎(阪神)2試合1勝1敗、防2・08※インフルエンザで2軍再調整

岡田俊哉(中日)4試合0勝1敗、1H、防6・75※2軍再調整

平野佳寿(オリックス)8試合0勝1敗、1H5S、防4・50

武田翔太(ソフトバンク)2試合1勝1敗、防5・91※けがで2軍再調整

【捕手】

大野奨太(日本ハム)打率・167、1本、4打点

小林誠司(巨人)打率・127、0本、0打点

炭谷銀仁朗(西武)打率・256、0本、2打点

【内野手】

中田翔(日本ハム)打率・176、0本、1打点※23日復帰

菊池涼介(広島)打率・281、1本、7打点

坂本勇人(巨人)打率・356、1本、9打点

山田哲人(ヤクルト)打率・224、2本、6打点

松田宣浩(ソフトバンク)打率・192、0本、5打点

田中広輔(広島)打率・306、0本、7打点

【外野手】

内川聖一(ソフトバンク)打率・348、5本、19打点

筒香嘉智(DeNA)打率・243、0本、6打点

秋山翔吾(西武)打率・324、4本、9打点

鈴木誠也(広島)打率・306、2本、12打点

青木宣親(アストロズ)打率・325、1本、4打点(※日本時間24日現在)

平田良介(中日)打率・297、4本、13打点

 数字を見ると「WBC後遺症」は「ない」と思われる。なぜなら、松井裕樹、菅野、坂本勇、内川、鈴木、秋山、青木ら、結果を残している選手がいるからだ。

 ちなみにマー君の24勝無敗はWBCの2013年、オランダ代表のバレンティンが60本塁打を放ち日本プロ野球記録を更新したのも同年だ。

 WBCが少なからず影響して、けがで出遅れている中田、武田らのケースは仕方ないかも知れない。

 ただ、WBCでバックアップメンバーとして実践練習が不足していたと思われる内川、鈴木らの好結果には頭が下がる。そんな奮闘する選手の後ろ姿を見せられると、WBCを不調の理由にしては言い訳としか思えない気がするのだ。また、世界一を争う大会として大きく育てていこうとするなら“WBCロス”を不調理由にしないほうが、大会の価値も、品格も下げないと思うのだが、どうだろう。

 WBC年に関わらず、過去のスタートダッシュでスーパースターが出遅れるケースはある。それでも彼らは卓越した技術とハートを持っており、シーズン終了時には結果を残してくるから心配無用。

 代表選手への配慮は少なからずあると思う。今回、WBC決勝ラウンドを終え日本に帰国し、ペナント開幕(3月31日)まで、中7日の休養があった。私がWBCに参加した2006年は帰国から中2日で開幕を迎えた。そんな時代からすればうらやましい。

 ファン目線で言えば、春休み期間中に開幕したほうが遠方からも野球観戦に足を運べたり、野球少年にも喜ばれたりするかも知れない。しかし、代表選手の疲労度と興行面での妥協点を探って3月末の開幕日に着地したと思われる。中7日の「WBC休養」は妥当な長さではないだろうか。

 不振の選手は、WBCでなく本人の問題。侍ジャパンで主力を務めた広島、巨人の選手が奮闘している。逆にロッテはWBCに石川1人しか選出されなかったが、チームは現在低迷している。

 私は2006年のWBCでベストナインに選出され、国内で同タイトルを手にしたことがなかっただけに逆にプレッシャーがかかった。「日本でベストナイン取れなかったら1発屋と思われる…」と。必死にやった結果は、キャリアハイに結びついた。

 通常のペナントレースも、レギュラーシーズン、CS、日本シリーズと続くが、1つ区切りで、後遺症になっているわけにはいかない。逆に燃えたぎっていくだろう。

 侍ジャパンは日の丸を背負った選手として、ファンの注目も、知名度も上がっている。WBCをフックに今年、一気にスターの道を上ってやるぞとプラス思考でハッスルプレーを見せてほしい。

 ◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「サトのガチ話」)