元ロッテの里崎智也氏(野球評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載中。45回目は「前半戦セパ総括」です。

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 12日にプロ野球も前半戦を終了した。80試合以上を消化しているチームも多く、その数字は全143試合の約6割。球宴明けは加速度を増して、ペナントへの行方が見えてくる。ここまでの戦いぶりは順位の通りだが、前半戦を総括して両リーグの印象を整理してみた。

【セ・リーグ】

 広島は断トツで、このまま一気に行きそうな気配だ。投打にスキがない。セでは1チーム、実力が飛び抜けている感さえある。大型連敗の雰囲気もない。先発はジョンソン、野村、大瀬良、岡田、薮田、リリーフ陣は中崎、ジャクソン、今村らチーム防御率3・30はセ2位。チーム打率2割7分8厘は12球団トップで、若干のビハインドを背負った試合でも、逆転しそうな雰囲気がある。不安要素はけが人のみ、という状況だ。

 2位阪神から5位中日までは7ゲームの中に4チームひしめく大混戦。最後の最後までどうなるか分からない。CS進出が最低ラインならどのチームが2位~5位になってもおかしくない。Aクラスのチャンスはどこにでもある。当然だが、最下位ヤクルトにとりこぼさないことが大事だ。

 ヤクルトは、けが人が多すぎて、正直なところ打開策が見つからない。バレンティンが6月末に復帰したとはいえ、山田、バレンティンだけでは打線はつながらない。雄平、畠山、川端、守護神秋吉ら主力級の抜けた穴は大きすぎる。

【パ・リーグ】

 1位楽天と2位ソフトバンクのマッチレースとなった。前夜12日までの首位攻防2連戦では、オールスター日程を利用した楽天が、則本-岸の必勝ローテで挑みホークスに連勝。工藤監督は楽天戦前に「ガチ勝負はもう少し先」と読んだが、この連敗がシーズンを終えて「吉」と出るか「凶」と出るか。楽天とソフトバンクの前半直接対決は楽天の8勝5敗。後半戦のガチ勝負12試合の勝敗比重は前半戦以上に大きくなる。

 日本ハムとロッテの、Aクラス入りは非常に厳しい状況となった。最下位ロッテは前半終えて借金30。1カ月貯金10積み上げても勝率5割まで3カ月かかる状況は現実的に見ても難しい。補強策を打開策の一手としたが、サントスは打率2割9分2厘、パラデスも開幕当初、本調子ではなかったが、6月の月間打率3割2厘、7月は同4割6厘、ペーニャも7月2割7分3厘と助っ人陣は序盤よりまずまずの働きを見せている。それでもチーム成績が上昇しないのは日本人選手が結果を出していないからだ。チームの土台を日本人選手が築き、その上に助っ人の働きがあってこそチームは勝っていく。

 昨年覇者の日本ハムは前半戦で借金20となりAクラスも厳しくなってきた。12日の大谷の今季初登板を見ても分かる通り、2軍で少し調整登板して1軍ですぐに勝てるほどあまくはなかった。今季けがで出遅れた大谷に過剰な期待は酷かも知れない。

 CS進出となるAクラス3つ目のイスは西武かオリックスか。4位オリックスは、ロメロ、マレーロの活躍に加え吉田正尚も復帰し主軸の破壊力は上昇気配。加えて小谷野、駿太、伊藤もいい働きを見せ始めた。3位西武とのゲーム差は6だが、後半戦次第で十分に手が届く。3位西武も持ち前の強力打線は健在で、2チームの打率は偶然にも2割5分9厘で一緒だった。西武は先発陣に若干の不安要素、オリックスはリリーフ陣に少し不安要素も見え隠れする。西武はオリックスとの直接対決で前半戦3勝8敗。後半戦で勝敗を巻き返せるか。オリックスは首位楽天に1勝8敗1分けと大負け、最下位ロッテに6勝8敗と唯一の負け越しで前半を終えた。特定球団に大負けしないこと、ロッテに取りこぼさないことがAクラスへの条件となる。

 ◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。